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欧米では日本に先行して、2024年ごろのeVTOL(電動垂直離着陸)機サービスの商用化を目指した取り組みが進められている。こうした海外での機体開発やインフラ、制度整備、ビジネス設計などの最新動向に関する情報は、空飛ぶクルマの社会実装を進めるうえで大いに参考になる。海外動向に詳しい、三菱総合研究所の大木孝氏に解説してもらう。(本誌)

 eVTOL機が世の中に広く知られるようになったのは、2016年10月、配車サービス最大手の米Uber Technologies(ウーバーテクノロジーズ)が発表した、都市における空の移動サービス構想がきっかけだ。

 通常、自宅から都市中心街までクルマで2時間の道のりを、eVTOL機によるオンデマンドな空の移動でたった15分に短縮するという画期的なサービスである。バーティポート(Vポート)と呼ばれるeVTOL機の離着陸場を整備しネットワーク化することで、道路や橋、トンネルといったインフラに対するコスト低減のメリットも提唱された。

 それから約6年が経過し、空の移動サービス構想は、多くの国や地域、企業の取り組みによって、社会実装に向けて着々と準備が進められている。当面のハードルは、機体の「型式証明」の取得である。

 開発が先行する米Joby Aviation(ジョビー・アビエーション)の「S4」やドイツVolocopter(ボロコプター)の「VoloCity」は、2023〜2024年ごろに型式証明を取得し、2024年ごろの商用化を目指して機体開発を進めている。

 同時に、運航サービスの計画も明らかになりつつある。ドイツLilium(リリウム)は、フロリダ州のオーランド市と提携し、eVTOL機の離着陸施設の建設を計画するなど、企業と自治体が連携した取り組みが進んでいる。これと並行して、米連邦航空局(FAA)や欧州航空安全機関(EASA)では、eVTOL機の型式証明や運航サービスの許認可、離着陸場の設置などを進めるための制度や安全基準を検討しており、段階的に整備されてきている。