かつてSF作品で描写されていた培養肉が、日本での普及まで数年後という段階に迫る。社会実装の最初のターニングポイントが2025年だ。培養肉ベンチャーの市販や「2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)」での試食などが計画中である。世界の食糧問題を解決できる手段として、新たな巨大市場が生まれようとしている。
2040年の食卓を想像してみよう。「培養肉製造装置」は、ブランド牛肉を低価格で再現できる3D(立体)プリンターである。食品メーカーが提供するレシピデータを購入し、キッチンに置かれた装置に送る。しばらく待つと、ステーキ肉がバイオインクで印刷される。この肉はブランド牛そのままの味や食感で、タンパク質や脂肪が個人の好みに合わせて最適化されている─。
そんな未来も、今や夢物語ではなくなってきている。日本国内では、日清食品ホールディングス(HD)といった大手食品企業に加え、日揮などのプラント運営企業も培養肉事業に本格参入している。2022年6月には、自由民主党の議員連盟が発足し、培養肉の法整備に向けて動き出した。コストの課題を解決すれば“夢の食材”が現実になるかもしれない。
自民党で議員連盟、法整備へ前進
「世界では2025年前後に向けて、培養肉の上市(市販)が検討されている。今後、グローバルサプライチェーンになるなかで、国際標準規格の形成に日本が主導的に関わっていくことが大事だ」
ここは、自民党本部の会議室。衆院議員の中山展宏氏はこう意気込みを示した。2022年8月4日に開催された「細胞農業によるサステナブル社会推進議員連盟」の総会での一幕だ。
同連盟の発起人には自民党前幹事長の甘利明氏や内閣官房長官の松野博一氏、衆院議員の赤沢亮正氏などが名を連ねる。「期待のある」(中山氏)培養肉について、2022年中の法案や提言の提出を目指す(図1)。