電気自動車(EV)向け電池交換サービス事業において、EVメーカーや電池メーカー計10社以上が入り乱れて覇権争いを繰り広げている。その主戦場となっている中国ではEV市場が年率100%超で急成長中だ。激しい競争の中で技術革新が相次ぎ、従来課題だったEVの長い充電時間が、電池交換では給油よりも短くなりつつある。利用者は従来にない新鮮な充電体験ならぬ、“換電(電池交換)体験”ができるようになってきた。
電気自動車(EV)向け電池交換サービス事業は、EV市場が猛烈な勢いで拡大している中国が主戦場だ。現時点では、共通の規格でまとまるよりも、早く利用者を増やし、業界標準を握る競争に忙しいようだ。電池交換の自動ロボットや電池の設計は、技術革新の頻度が特に高く、次々にバージョンアップを繰り返している。
特徴や競争軸は12以上
電池交換ステーションやそれを使った電池交換サービスのデファクトを握ろうとするメーカーは各社各様のアプローチで、競争に参戦している。サービスの特徴や競争軸は電池交換時間の他にも非常に多く、少なくとも12はある(図1)。
その中で、電池交換ならではの特徴の1つが、料金体系である。現時点で料金体系をある程度明らかにしているのは、個人向けの電池交換サービスで先行する中国の上海蔚来汽車(NIO)ぐらい。その詳細をみると電池交換サービスの特徴がよく分かる。
具体的には、NIOは利用者が新車を購入する際、車両を電池込みで買い取るか、電池は買い取らずにBaaS(Battery as a Service)というリース契約の一種をするか、選択させている。前者では、電池交換は原則せず、他のEVと同様に、家庭などで充電して運転するといった乗り方になる。この場合、NIOのEVは、米TeslaのEVよりもかなり高価で、明らかに富裕層向けだ。
ただし、家庭では7kWの充電機器であればNIOが無料で設置してくれる。充電料金は、NIOのアプリで紹介されている充電ステーションであればどこで充電しても1カ月1000kWhまでは、ユーザーが支払った料金分のポイントをNIOからもらえる。電費が仮に5km/kWhであれば、月に5000kmまで事実上無料で走れることになる。国土が広い中国とはいえ、業務に使う場合以外では、この無料枠を使い切るケースはまれなはずだ。
交換前提なら7万元引き
一方、購入時に後者のBaaSを選択すると、電池の容量が75kWhの場合、車両価格は電池込みの場合から7万中国元(以下、元。1元=20日本円で140万円)値引きされる(図2)。中国政府の補助金なども利用すると、値引き後、ようやくTeslaのEVと同程度の価格になる。ただし、これに蓄電池は含まれていない。
蓄電池はもちろん無料ではなく、容量が75kWhまでの場合、月額980元と追加の諸費用月額80元の計1060元(同2万1200円)を基本料金として支払って使う格好になる。