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中国を主な舞台として競争と拡大が進む電気自動車(EV)向け電池交換サービス。電池交換ステーションの仕様は10種類以上あり、乱立状態だ。ただし、それを根拠に、当分混乱が続き市場拡大が遅れると考えると間違いかねない。一見野放図な競争と方式の乱立に見えるのは表層だけで、実は電池交換方式の共通化が水面下で進んでいる可能性があるからだ。その“黒幕”ともいえるのがEV向け電池最大手の中国・寧徳時代新能源科技(CATL)である。

 2021年秋以降、中国ではEV電池交換サービスとその対応車両に互換性を持たせるための国レベルで推進する動きが目立ってきた。例えば、日本の経済産業省と総務省の間を取ったような中国政府の工業和信息化部(工業&情報化部、MIIT)は2021年10月、一般のEV向けに8都市(北京、南京、武漢、三亜、重慶、長春、合肥、済南)、トラックなど大型車向けに3都市(宣賓、唐山、包頭)をパイロット都市に指定。計1000カ所の電池交換ステーションと対応EV10万台を投入して電池交換方式を推進していくことを発表した。

 それに遡ること半年の2021年4月には、中国の国家標準委員会が、電気交換方式のEVとして本格的な国家規格となる「電気自動車交換の安全要件(GB/T 40032-2021)」の策定を完了した(表1)。

表1 中国におけるこれまでのEV向け電池交換関連の規格
(出所:日経クロステック)
規格 内容 公開時期 施行時期
GB/T 29316-2012 充電および電池交換の出力について 2012年12月 2013年 6月
NB/T 33006-2013 電池交換システムにおける一般的要件 2013年11月 2014年 4月
NB/T 33018-2015 充電および電池交換システムの技術仕様 2015年 4月 2015年 9月
GB/T 37133-2018 メインケーブルの耐久性について 2018年12月 2019年 7月
GB/T 40032-2021 電池交換システムの安全性とその試験方法 2021年 4月 2021年11月
GB/T 40098-2021 電池交換用電池のIDとその表示方法 2021年 5月 2021年12月

2008年の北京五輪前後が最初のブーム

 本格的というのは、中国における電池交換方式関連の国家規格は2012~2013年の時点で幾つか策定されているからだ注1)

注1)実は中国における電池交換方式への取り組み開始は2000年と早い。2008年の北京五輪や2010年の上海万博での披露を想定して、上海電巴新能源科技(Dianba New Energy、現Aulton New Energy)が電動バス(電巴)で電池交換の実証実験を始めた。
 その後、2011年には電力企業の中国・国家電網が電池交換を強く支持し、各地に電池交換ステーションを敷設した。これには当時米Better Placeが大きな話題になったことも影響したかもしれない。上述の国家規格もこれに合わせるように策定された。
 ところが、当時はEVの利用者自体が少なく、事業はやはり成功しなかった。Better Placeの倒産に合わせるようにいったんは中国での電池交換熱も冷めたものの、中国・上海蔚来汽車(NIO)の登場と共に再び機運が高まってきたようだ。2015年、2018年には追加の規格が補充されている。これらの規格策定にはNIOのほか、中国・北京汽車(BAIC)、同・吉利汽車(Geely)などが参加したもようだ。

 ただし、既存の関連規格は、内容を見る限り推奨ガイドライン、あるいはとりあえず守るべき要件といったものに近く、それを守ったからといって互換性が確保できるようなものではなかった。