2022年2月24日にロシアがウクライナへと侵攻してから半年以上が経過した。現在も戦闘状態が続く中、「自律・分散・協調」を掲げて著しい発展を遂げてきたインターネットが揺らいでいる。国家の対立が、グローバルで単一のネットワークとして社会・経済インフラと化したインターネットに亀裂をもたらす動きが顕在化してきたからだ。「スプリンターネット」と呼ばれるインターネットの分断は、緊張を増す世界情勢を反映するかのように加速していくのか。
「ロシアのドメインである.ruや.PФ、.suなどを永久に、または一時的に失効させてほしい。そして上記ドメインのSSL証明書の無効化、ロシア内のDNSルートサーバーも停止してほしい」
非営利団体「ICANN」のCEO(最高経営責任者)Goran Marby(ヨーラン・マービー)氏の元に2022年2月28日、こんな前代未聞の要請が届いた(図1)。差出人は、ウクライナ副首相兼デジタル改革大臣のMykhailo Fedorov(ミハエル・フェドロフ)氏だ。
ウクライナ政府が前代未聞の要請をしたICANNとは、インターネットの住所に当たるドメイン名やIPアドレス、さらにDNSルートサーバーなどを民間主導でグローバルに調整する団体だ注1)。