ディスプレー業界の最大の注目は、テレビ向けの有機EL(OLED)パネルを巡る韓国LG Display(LGディスプレイ)とSamsung Display(サムスンディスプレイ)の争いだ。「CES 2023」では、両社の今後の競争軸がはっきり見えた。この戦いから日本勢は蚊帳の外だが、今回のCESではソニーとジャパンディスプレイ(JDI)がそれぞれ、独自の特徴を持つディスプレーの改良版を披露した。
有機ELパネルの進化の方向性はずばり「高輝度」にある。HDR(High Dynamic Range)が当たり前の時代になり、高輝度化に対する要求が高まっている。だからといって、有機ELはむやみに電流を投入するわけにはいかない。輝度を高めようとすると、自発光デバイスであるが故の信頼性、安定性、寿命の問題が立ちはだかる。
おのずとリミッターがかかり、平均輝度は数百nits(ニト)と低めに抑えられていた。その限界をいかに乗り越えるか。これこそが、有機ELパネルの重要課題だった。
液晶ディスプレー(LCD)が全盛の時代に、有機ELが登場したときは「液晶より圧倒的に黒が締まり、コントラストが格段に高い」の一言で、液晶をノックアウトできると思われた。でも液晶は黒で負けても、白では勝っている。有機ELは液晶の明るさの前にはひれ伏すしかない。そこで昨今の有機ELの開発では、最重要事項として「輝度向上」が高く掲げられるようになった。それは同時に、テレビ用の有機ELパネルを巡る覇権争いに直結する。
2021年まで、世界のほとんどの有機ELテレビメーカーはLGディスプレイの白色有機EL†パネルを採用していた。その状況が2022年に変わった。サムスンディスプレイが発表したLG対抗の有機ELパネル「QD-OLED」を韓国Samsung Electronics(サムスン電子)、ソニー、米DELL(デル)が採用したからだ。
では2023年はどうなるのか。それを占う上で見逃せないのが、CES 2023で明らかになった韓国2大有機ELパネルメーカーによる最新の輝度向上対策である。