1980年代に栄華を誇り、今や衰退の一途をたどる日本の半導体製造事業。この状況を反転させようと、日本政府が動き始めた。背後にいるのは、台湾有事を懸念する米国政府だ。世界の半導体生産の中心地、台湾からの出荷が止まれば、世界経済は大混乱に陥る。半導体は軍事的に最重要の戦略物資となっており、技術面で中国が自立し、米国を追い抜くことがあればパワーバランスが変わる。こうしたパワーゲームの中で、日本は半導体製造の世界で再び輝きを取り戻せるのか。

半導体、覇権の行方
目次
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米国の半導体戦略に取り込まれる日本、中国の反撃に注視
第1部:世界動向
米国が半導体サプライチェーン確保に向け動きだした。米国、日本、欧州それぞれで先端半導体を製造できるサプライチェーンを確保する一方、この3極プラス台湾で量産と技術を囲い込もうという戦略だ。日本もこの大戦略に沿って大きく動き始めた。
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IBMからの打診も「担える国内企業がいない」、ラピダス誕生の舞台裏
第2部:日本動向
先端半導体の国産化を目指す企業、Rapidus(ラピダス、東京・千代田)が誕生した。同社は設立されるやいなや、EUV(極端紫外線)露光装置の確保にめどをつけ、米IBMやベルギーの研究機関imecの協業を立て続けに発表している。
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米国半導体規制の抜け穴を突く中国、先端プロセス影響は1年後か
第3部:中国動向
米国の対中国半導体規制がすさまじい。2022年10月には先端製造装置の輸出に厳しい規制を敷いた。中国はもはや先端プロセスを製造できないのか。日本の半導体産業への影響は。
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ラピダスが目指す2nm世代のGAAって何?半導体微細化10の疑問
第4部:Q&A
Rapidus(ラピダス)が2027年の量産開始に向けて製造を目指すのが、GAA(Gate All Around)という先端技術を使った2nm世代プロセスのロジック半導体である。GAA構造の量産に行きつける企業は、世界でも限られている。
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台湾アナリストが分析、「製造できるが採算合わない」
第5部:台湾から見たラピダス
先端半導体の量産を主導するTSMC(台湾積体電路製造)を擁する台湾からは、2nm世代プロセスの量産を目指すファウンドリー企業Rapidus(ラピダス)はどのように見えるのか。
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「台湾有事は必ずある」、半導体30年停滞でTSMCは垂涎の的に
第6部:米中半導体摩擦
米中半導体摩擦を背景とした新たな半導体サプライチェーンを巡り、各国が岐路に立たされている。その渦中にあるのが台湾積体電路製造(TSMC)だ。同社は高まる地政学的リスクを分散するため、日米にロジック半導体の新工場を設立し、ドイツでも検討を進める。
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米国視点で見る「日本半導体敗戦」、痛手だったサムスンへの政治的支援
第7部:半導体興亡史
2022年10月、米国で興味深い書籍が出版された。半導体の世界史を米国の視点から描いた『CHIP WAR(チップ・ウォー)』だ。この本からは、米国政府・産業がいかに日本を恐れ、逆にあの手この手で力を削いだ歴史を知ることができる。