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先端半導体の国産化を目指す企業、Rapidus(ラピダス、東京・千代田)が誕生した。同社は設立されるやいなや、EUV(極端紫外線)露光装置の確保にめどをつけ、米IBMやベルギーの研究機関imecの協業を立て続けに発表している。まずは量産にこぎつけられるのか、さらに人材を集められるのか。日本半導体が険しい道の第一歩を踏み出した。

 「先端半導体の製造を担いたがる国内企業がいない」─。ラピダス設立の2年程前、日本政府と国内の半導体関連業界は揺れていた。きっかけの1つは、米IBMからの打診である。「2nm世代プロセス注)の製造に必要なGAA(Gate All Around)構造の技術を提供したい」という内容だった。

注)なお、「2nm」のような数値は、もともとは回路の最小線幅を指していたものの、現状では世代名を表す程度の意味しか持たない。ラピダスが製造を目指すのは台湾TSMC(台湾積体電路製造)が指す「2nm」世代プロセスである。

 実のところ、IBMも、そして米国政府も日本に先端ファウンドリーが設立されることを熱望していた。米中貿易摩擦の緊張が高まる中で、地政学的に安全性が高い地域から先端ロジックを調達したかったからだ。

 IBMとしては、スーパーコンピューターや量子コンピューターの開発に先端プロセス半導体が欠かせない。ただ、台湾TSMC(台湾積体電路製造)への依存度が高まると地政学的だけでなく、経営戦略上でも不安がある。総合電機メーカーである韓国Samsung Electronics(サムスン電子)とは競合関係にもなり得る可能性があるうえ、中国や北朝鮮に挟まれた危うい立地にある。そこで白羽の矢が立ったのが、かつては、半導体摩擦もあった日本だった。

 先端半導体は、軍事分野やコンピューティング分野に欠かせない。中国の製造を阻止しつつ、米国が主導する「同盟国・地域による半導体サプライチェーン」を形成する動きと一致した。