世界の電力系統が蓄電池で急速に変わり始めた。“電力の銀行”ともいえるVPP(仮想発電所)が本格化し、大型の定置用蓄電池から、家庭用蓄電池、そして電気自動車(EV)の蓄電池までもが自ら“稼ぎ”始めた。これまで蓄電池は、災害などに備えた掛け捨ての保険のようなものだったが、今後は導入費用の償却が見込める。蓄電池は電力系統の平準化に大きな役割を果たす。そしてそれは、再生可能エネルギーの一層の大量導入に道を開くことになる。

特集
働く蓄電池
~VPP本格化で置いておくだけで儲かる時代に~
目次
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テスラがVPPに本腰、中型“発電所”をほぼタダで構築
第1部:TeslaのVPP
米Teslaが沖縄を含む世界各地で、電力事業を本格的に始めた。事業組織名は「Tesla Electric」。サービス内容は「Tesla VPP」である。参加者の蓄電池の電力を束ねて仮想発電所(VPP)とし、その電力を運用して参加者に報酬を出す銀行のようなサービスである。
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日本でもVPPの準備着々、100社超が参入見込み
第2部:日本の現状
仮想発電所(VPP)は、多数の分散型電源を束ねるという側面をみれば、まさにIoT(Internet of Things)技術。一方、参加者の電気を預かって運用するという側面をみると、銀行など金融機関の技術“金融テック”そのものである。
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1万超の電源の“群制御”技術がカギに、電力取引市場はいきなりAI勝負
第3部:技術の今
日本でも多数の企業が参入見込みの仮想発電所(VPP)事業だが、その技術的な参入障壁は意外に高い。システムの優劣が、事業内容の選択の幅や成果、収益に直結する。
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日本でV2H市場が離陸へ、EVが電気を運ぶ手段に
第4部:V2H
電気自動車(EV)は数十k~100kWhの大容量蓄電池を搭載している。これを“家庭用蓄電池”として使うV2H(Vehicle to Home)の市場が立ち上がり始めた。さらにこれをVPP(仮想発電所)の分散型電源として活用することで、再生可能エネルギーやEV自身の課題が解決する見通しが出てきた。
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再エネと蓄電池の主力電源化時代、系統の“指揮者役”も交代
第5部:将来動向
仮想発電所(VPP)が拡大していけば、電力の平準化コストが下がり、再生可能エネルギーの大量導入に拍車がかかりそうだ。ただし、電力系統に関する最後の技術的課題が立ちはだかってくる。