
COVER STORY
目次
-
全銀システム50年目の決断
変化と安定のはざまで揺れる議論 「銀行のためのシステム」から脱却なるか
「次期全銀システムで、変えるべきところと守るべきところはトレードオフの関係になりがち。バランスを取るのに苦労した」。銀行間送金を担う「全国銀行データ通信システム(全銀システム)」を運営する全国銀行資金決済ネットワーク(全銀ネット)で企画部長を務める千葉勇一氏は、こう打ち明ける。
-
目覚める自我
デジタルアイデンティティー台頭 問われる既存金融機関の役割
メタバースなどデジタル空間の普及や現実社会のデジタル化が進むにつれて、データをやり取りする相手あるいはデータそのものを信頼できないという問題が顕在化している。
-
ChatGPTが刻む新時代
1億2000万人を飲み込んだ革新のうねり AI活用の次なる画期が迫りくる
「DX(デジタル変革)人材を自認するなら、ChatGPTを触っていないと話にならない」。損害保険ジャパンDX推進部開発推進グループリーダーの石川隼輔氏は、対話型AI(人工知能)の「ChatGPT」に関するDX推進部での勉強会でこう語った。
-
未開のBaaS
メガバンクも踏み入れた難路 試行錯誤へ問われる覚悟
「口座を取られる側の立場なので対抗手段として、同じ土俵に立つか別の魅力を発揮するか。何もやらないわけにはいかない」――。三菱UFJ銀行デジタルサービス企画部DX室新事業Gr上席調査役の海家直幸氏は、こう決意を語る。
-
バンキングアプリ 再起の道
周回遅れにもがく地銀 利用率向上へ高まる刷新機運
「バンキングアプリの利用率は、競合となる都市銀行が稼働顧客数の3割に迫るのに対し、当行は2割にとどまる。デジタル化の進展やコロナ禍での行動様式の変化といった、外部環境からの圧力は強い。
-
カード不正対策のジレンマ
2025年に迫る本人認証の義務化 高い理想に横たわる溝
「クレジットカードの加盟店から問い合わせが急増している」。こう証言するのは、EC(電子商取引)サイト事業者向けにカード不正利用の検知サービスを提供する、アクル代表取締役社長の近藤修氏だ。
-
金融教育の正念場
指導要領改訂で高まる熱気 業界の足並みが成否を分ける
「資産運用・形成に興味は持っているが、きちんと話を聞く機会がなかった」「ネットに情報はあふれているが何から始めていいか分からず、なかなか1歩目を踏み出せない」──。京都銀行 個人総合コンサルティング部主任の森本恵氏は、2021年7月に開始した金融教育プログラムを受講する学生からこんな声を聞いた。
-
銀行口座の動揺
お金の流れを覆す デジタル給与が促す自問
「不透明な状況だったが、いったん実現することになった。参画を前向きに検討する。できる範囲の準備は進めてきたので、実を結べるように対応していきたい」。楽天ペイメント戦略室企画部副部長兼楽天Edy楽天キャッシュ事業推進室副室長を務める鍋山隆人氏は語る。
-
信頼性の呪縛
DXの停滞招く障害ゼロの御旗 「SRE」が攻守の指針を照らしだす
「障害の再発防止策に関して議論を重ねた結果、自然とこの考え方に行き着いた」。東京証券取引所 IT開発部トレーディングシステム担当統括課長の松田敬治氏は、システム安定稼働のための方法論「SRE(Site Reliability Engineering)」を採用したいきさつをこう語る。
-
砂上のメタバース
膨張続く混沌の新世界に インフラ掌握の好機が眠る
「メタバースを起点に保険ビジネス自体が変わる可能性が高い。100歩先を見据え、今から取り組む必要がある」。損害保険ジャパン コマーシャルビジネス業務部部長の大橋照永氏は、メタバースの事業化に向けて意気込む。
-
キャッシュレス 移ろう主役
広がり続けるエコシステム 競争の舞台は決済にあらず
「初めて30%を超えた。堅調に推移している。このまま行けばという前提だが、2025年に4割という目標に到達しそうだ」。経済産業省キャッシュレス推進室長の降井寮治氏は、キャッシュレス決済の浸透について手応えを語る。
-
SaaSの本領
デジタル化の必然 成果を分ける金融機関の自助努力
スルガ銀行が2022年5月、永住権を持たない外国人向けに普通口座をスマートフォンで開設できるサービスを開始した。地方銀行では初めてという。コロナ禍で非対面の顧客接点強化が重要になるなか、ITリテラシーや国籍を問わず、いかに金融サービスをくまなく提供するかが課題となっていたことが背景にある。
-
デジタルアセット 拭えぬ旧弊
利用者保護とイノベーション はざまに揺れる法規制の着地点
「ステーブルコインの発行を予定していたが、計画はいったん止まっている」。ブロックチェーン推進協会(BCCC)代表理事を務めるアステリア代表取締役社長CEO(最高経営責任者)の平野洋一郎氏は、BCCCが推進していたステーブルコイン「Zen」のプロジェクトについてこう明かす。
-
銀行APIの波高し
接続料問題に漂う手詰まり感 民間任せが疲弊を招く
「銀行口座があると、こんなに便利になると示したい。口座を持つことの価値を高めていく」──。三菱UFJ銀行デジタルサービス企画部DX室新事業Gr調査役の柳澤隆氏は力を込める。
-
BNPLの憂い
過熱の裏に潜む消費者保護のひずみ
「BNPL(後払い)へのニーズは非常に高い。この決済方式に対応し、より多くのものを売買してもらえるようにしたい」。こう語るのは、EC(電子商取引)サイト構築・運営支援を手掛けるBASE最高経営責任者(CEO)の鶴岡裕太氏だ。
-
共通ポイントの無常
決済との一体化が招いた混沌 4強体制に異変あり
2021年12月8日、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)社長兼CEO(最高経営責任者)の増田宗昭氏は、イオン会長の岡田元也氏と向き合っていた。「今後もよろしくお願いします」。増田氏は岡田氏に対して足元の「Tポイント」の状況を説明し、ポイント分野でのさらなる連携強化の可能性を探ったようだ。
-
電子帳簿 深まる混沌
戦略なき法制度対応が招く 「デジタル敗戦」からの足踏み
「2021年7月ごろに具体的な要件が示されたので、対応を進めてきた。ところが12月になって突然、『猶予期間を設ける』という話が出て驚いた」。ある大手銀行の関係者は、2022年1月に施行された改正電子帳簿保存法(電帳法)における「電子保存の義務化」に2年間の猶予が付いた点について、こう話す。
-
見果てぬエコシステム
共存共栄を阻害するオープンイノベーションの落とし穴
「新しい金融サービスを世に送り出すサイクルをさらに加速させていく」。GMOあおぞらネット銀行で執行役員企画・事業開発グループ長を務める小野沢宏晋氏は、同行が2021年12月13日に開始したソフトウエア部品の売買サービスに関して、こう意欲をみせる。
-
基幹系の針路
デジタル時代に残された「聖域」 傍観の先に果実なし
「対面中心の業務を前提とした基幹系システムから、いまだに脱却できない金融機関は少なくない。それらはいずれ、デジタル主体の基幹系を活用して新たなビジネスモデルを打ち出す銀行や証券会社の軍門に下ることになるのではないか」。
-
リスキリングの要請
デジタル時代が駆り立てる 従業員のトランスフォーメーション
「5万人という規模で実施に踏み切ったことに本気度合いを感じる」。ある金融機関幹部は、三井住友フィナンシャルグループ(SMBCグループ)が2021年3月に開始した「SMBCグループ全従業員向けデジタル変革プログラム(以下、変革プログラム)」について感想を漏らす。