挑戦者
目次
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競争力強化に必須、日本に3Dプリンターを
京極秀樹(近畿大学次世代基盤技術研究所 特任教授)
年々市場が拡大している3Dプリンター〔付加製造(AM)装置〕。日本でも利用が拡大しつつある一方、欧米と比較すると遅れている。3Dプリンターは高機能製品の製造も可能にする技術だ。金属3Dプリンターの権威である近畿大学次世代基盤技術研究所特任教授の京極秀樹氏は「普及の遅れは日本の産業競争力低下につなが…
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スタートアップが目指す、高温ガス炉の商用化
濱本真平(Blossom Energy CEO)
日本原子力研究開発機構(JAEA)の研究者が組織を飛び出し、原子炉の設計を生業(なりわい)とするスタートアップを創業した。決断の背後にあったのは、日本の原子力産業に対する危機感だった。目指す姿は、高温ガス炉(HTGR)の設計図をプラントメーカーに売る「ファブレスメーカー」。
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工場内の自動運転が、無人搬送を実現する
米光正典(eve autonomy 代表取締役CEO)
ヤマハ発動機と自動運転のティアフォー(名古屋市)が共同で、ゴルフカートベースの自動運転車で工場敷地内の搬送を無人化。AGVではカバーできない、建屋間の搬送も可能にした。eve autonomyは、その技術を基に自動搬送の一括サービスを提供する。車両の工夫と工場内ルールの両面で安全性を確保し、公道で…
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安全にこそICTを、Safety2.0を鉄道へ
向殿政男(鉄道総合技術研究所 会長)
フェイルセーフの原理をはじめ、安全の研究がライフワーク。人間、技術、組織の3者が補う「協調安全」の推進を目指す中で、鉄道開業150周年の節目に、鉄道総合技術研究所のトップを務める。鉄道はまさにフェイルセーフを基本とするシステム。
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デジタル化と脱炭素に挑む
北野嘉久(JFEスチール 代表取締役社長)
日本のものづくりを支える鉄鋼業大手JFEスチールのトップとして、全社のデジタルトランスフォーメーション(DX)とグリーントランスフォーメーション(GX)を率いる北野嘉久氏。目指すのは全生産ラインをデジタル化し、生産や品質をリアルタイムに管理する仕組みの確立だ。GXについては水素の活用に力を注ぐ。D…
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買収前後で社風一変、工作機械の世界一へ
若林 謙一(日本電産マシンツール 代表取締役社長CEO)
2021年8月に三菱重工業を離れ、日本電産グループの一員となった日本電産マシンツール。会社が目指す先は歯車工作機械などでの「ニッチトップ」から、工作機械業界の「世界一」に一変した。
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データでタイヤ革新、AIと人の協奏描く
小石 正隆(横浜ゴム エグゼクティブフェロー 研究先行開発本部 AI研究室 研究室長)
横浜ゴムが人工知能(AI)を活用したタイヤ開発を進めている。2021年にはゴムの物性やタイヤの特性をAIで予測できるシステムを構築した。電気自動車(EV)向けの静粛性に優れたタイヤの開発にもAIを生かしている。
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木に限りなく近いプラ、石油なしの理想追う
浜辺 理史(パナソニック ホールディングス マニュファクチャリングイノベーション本部 材料・デバイス技術部 成膜技術課 主幹技師)
セルロースファイバーとプラスチックの複合材料をいち早く実用化した。石油の使用量を削減でき、リサイクルしても強度が落ちにくい。独自のセルロース製法によって、剛性と耐衝撃性という付加価値を確保。
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ローカル5G普及で、通信の「民主化」を
中尾彰宏(東京大学大学院工学系研究科教授)
東京大学大学院工学系研究科教授の中尾彰宏氏は、5Gの通信ネットワークを民間企業などが独自に構築できる「ローカル5G」の普及に腐心する。目指すは通信事業者だけではなく、一般企業なども一丸となって技術を発展させる情報通信の「民主化」だ。ボトムアップによる通信産業の革新を狙っている。
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根本思想は「安全」、自動運転にあらず
樋渡 穣(SUBARU 技術本部 技監)
SUBARU(スバル)が誇る運転支援システム「アイサイト」。世界で初めてステレオカメラによる衝突被害軽減ブレーキを実現した。その初代モデルから開発に携わってきたのが樋渡穣氏だ。
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「できない」を疑う、限界への挑戦が醍醐味
山口勇二(グーテンベルク メカニカルエンジニア)、鈴木亮介(極東精機製作所 代表取締役社長/グーテンベルク 取締役製造担当)
グーテンベルク(東京・大田)が開発した3Dプリンター「G-ZERO」は従来機の数倍という高速造形が売りだ。開発をリードした山口勇二氏は、「できないと思われていたことに挑戦しその解決策を探るのが技術者の醍醐味」と語る。
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モデルは公式、協調範囲を広げよ
人見 光夫(MBD推進センター ステアリングコミッティ委員長 マツダ シニアイノベーションフェロー)
コンピューター上でのシミュレーションで開発を効率化するモデルベース開発(MBD:Model Based Development)。自動車業界でのMBD活用を広げて協調開発を効率化すべく「MBD推進センター」が2021年7月に発足した。
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大量の在庫が成長源、教科書にない経営貫く
中山 哲也(トラスコ中山 代表取締役社長)
機械工具卸売業のトラスコ中山は、「在庫は悪」という製造業の常識の真逆を行く独自の在庫戦略で成長を遂げている。既に約50万アイテムもある品ぞろえを、2030年には2倍の100万アイテムにまで拡充する計画だ。
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全自動の植物工場、海外市場も視野に
森田 卓寿(FAMS 代表取締役社長)
種まきから収穫まで自動化した植物工場システムを開発、食品工場とセットにしたソリューションを提供して、野菜の安定調達と生産合理化を図るFAMS(新潟県見附市)。
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制御用のAIに特化、賢い生産設備実現
出澤純一(エイシング 代表取締役CEO)
製造業を中心に機械制御用の人工知能(AI)を開発するエイシング。ディープラーニングとは一線を画し制御向けに絞った軽量、高速、高精度が売りだ。学生時代のロボットの制御をきっかけに起業した出澤氏。生産現場向けの制御用AIは、あるようで実はほとんどなく「ブルーオーシャン」という。
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SNSで新市場を開拓、金属加工の魅力発信
會田 悠城(ヒカルマシナリー 品質保証部兼開発部部長)
山形県・山辺町にある金属加工の町工場が、TwitterなどのSNSを駆使して民生品の加工・販売という新事業に挑戦している。中でも購入者の横顔を反映させてオーダーメードで造る「ルビンの壺(つぼ)」は話題を呼んだ。
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町工場の底力で、宇宙産業へ進出
永松 純(由紀精密 取締役社長)、松本 幸子(由紀精密 開発部部長)
切削加工を中心に金属の精密加工での実績を持つ由紀精密(神奈川県茅ケ崎市)。2006年に立ち上げた開発部は、部品単体の精密加工にとどまらず、機能要素の設計や顧客への提案も手掛ける。
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部品の国内生産が、日産復活の命運握る
玉村 和己(日翔会会長 ニッパツ名誉会長)
目下、経営再建のさなかにある日産自動車。その復活に欠かせないのが、日翔会のバックアップだ。日翔会は、日産自動車に部品を供給する主要企業で構成された協力会。
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異色の東大生研所長、本気の産学連携描く
岡部 徹(東京大学生産技術研究所・所長)
日本で最大規模の大学付置研究所である東京大学生産技術研究所。新所長に就いた岡部徹教授は様々な大学で研究を重ねながら、積極的に企業と連携してきた。歴代所長の中では異色の存在だ。
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理想を求めた、CFRP立体成形
浅輪 勉(VAIO テクノロジーセンター メカ設計部 テクニカルアーキテクト)、清水慎也(VAIO 製造・EMS本部 技術&製造部 技術課)
VAIO(長野県安曇野市)が2021年2月に発売したノートパソコン「VAIO Z」。フラッグシップモデルとして挑んだのが、外装部品(ボディー)に使っている炭素繊維強化樹脂(CFRP)の部品を、従来にない立体的な形状で実現する技術。