挑戦者
目次
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衛星で「世界に勝つ」、早く安くロケットも
酒巻 久(キヤノン電子 代表取締役会長)
キヤノン電子の宇宙事業が本格化している。2020年10月に超小型人工衛星「CE-SAT-IIB」の打ち上げに成功。搭載の超高感度光学カメラでこれまで難しいとされてきた人工衛星による深夜の地表を撮像してみせた。21年1月には超小型人工衛星の販売も開始した。ほぼ全部品を内製した人工衛星で、世界を相手に…
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10年前は何度も号泣、社員の思いが企業力
佐藤順英(エイブル 代表取締役社長)
放射性物質を放出した福島第1原子力発電所〔1F(イチエフ)〕1・2号機排気筒。原発事故の象徴的存在だったが、2020年5月に上半分が撤去された。その撤去工事を担った地元企業エイブル(福島県大熊町)を率いる。原子力発電所を支える優秀な下請け企業だった同社が、大手をコンペで退ける元請け企業になぜ変貌で…
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若手を成長させた、クルマ形“柿の種”
松永智昭(日産自動車 総合研究所実験試作部試作技術課リーダー)
歴代の日産車23種をかたどった米菓「新型カキノタネ」が半年で10万個を出荷する予想外のヒット商品になっている。日産自動車と伊勢原市のコラボ企画で生まれた商品だが、菓子の製造に使う金型の製作も同社総合研究所が請け負った。本業のクルマ開発には程遠い内容のプロジェクトだったが同研究所には、協力するべき理…
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新鋭機を手で操り、感覚で常識を超える
石井貴幸(いしい旋盤製作所 代表取締役)
2020年の「切削加工ドリームコンテスト」(DMG森精機)で金賞を受賞した、いしい旋盤製作所(東京・大田)を率いる。最新鋭の加工機を駆使した応募作品は審査員を当惑させた。どうやって削ったか、切削加工の専門家でも分からなかった。手の感覚で加工する技能を引き継ぐ次世代の担い手を増やしたい、と語る。
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技術を持つ人だけが、価値を提案できる
澤谷 由里子(名古屋商科大学ビジネススクール 教授)
製品を使う前後を含めて、顧客が本当にやりたいことを支えられるか。そこまで面倒を見るのがサービス化の考え方、と説くそのサービス化は、技術に支えられなければ効率が悪く、1社では完結しないから多くの関係者と共創する必要がある。そこでは技術を持つ人こそが価値を提案し、未来をつくっていける。自らの枠を広げて…
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町工場のアフターコロナ、デジタル武器に新事業へ
大坪正人(由紀精密代表取締役社長)、宮本卓(Creative Works 代表)
ポストコロナの「新常態」に向けた新しいビジネスや働き方へのシフトが進んでいる。国内製造業を支えてきた中小製造業は、今、そしてこれからどうあるべきか。現場作業のリモート化や新事業に挑む大坪氏と宮本氏に、コロナ禍への対応やデジタルトランスフォーメーション(DX)などを語り合ってもらった。
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企業変革力が必須、そのためのデジタル
矢野剛史(経済産業省 製造産業局 ものづくり政策審議室長)
経済産業省で製造業の企業に向けた政策のかじを取るものづくり政策審議室長に7月20日付けで着任した。新型コロナウイルス感染症に未曽有の打撃を受け、先行きの不安が高まる製造業各社に、今こそDX(デジタルトランスフォーメーション)の好機と説く。現場の声を聞き、「現場が求める道標」を示したいと意気込む。
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日本に足りぬ2つのE、米国で得た研究の肝
菊池 昇(豊田中央研究所 代表取締役所長/米ミシガン大学名誉教授)
“自動車の次の事業”を目的に設立されたトヨタグループの中央研究所に招かれて20年。米デトロイト郊外の大学などで得た米国流の研究哲学で自動運転や電動化を支える研究所の舵(かじ)取りを担う。深く掘り下げる研究より、新しい技術に身軽に飛びつくべきだと説く。
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データこそ共通言語、DXで見える化進める
小笠原 浩(安川電機 代表取締役社長)
「YDX(YASKAWA Digital transformation)」を進める安川電機。デジタル経営の実現を掲げ、あらゆる現場の情報をデジタルデータで「見える化」して、迅速かつ緻密な経営判断を実現するのが目標だ。そのためにコードや業務の統一と標準化を進めてきた。改革の先頭に立つ小笠原氏に狙いを…
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新型コロナ機に攻勢、地産地消を加速
大山 晃弘(アイリスオーヤマ 代表取締役社長)
新型コロナ渦中の2020年3月にマスク生産の国内回帰を表明、材料の内製化や規模拡大に進むアイリスオーヤマ(仙台市)。月産1億5000万枚のマスク国内生産は最初の一歩。コロナ禍でも好調な販売と、培った生産技術を武器に生産拠点やサプライチェーンの再構成を目論(もくろ)む。集中から地産地消へ、社長の大山…
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省・小・精の技術で社会に変革を
小川恭範(セイコーエプソン 代表取締役社長)
時計を源流に持つ精密加工技術をプリンターなどに展開してきたセイコーエプソン。2020年4月に新社長となった小川氏は、強みを生かしつつも、技術起点の発想から脱却し、多様なアイデアが生まれる自由闊達な組織風土の実現と社会課題の解決を基にした事業創出を目指すと意気込む。
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リニア技術を転用へ、鉄道とそれ以外にも
長嶋 賢(鉄道総合技術研究所 浮上式鉄道技術研究部部長)
2027年開業を目指すリニア中央新幹線の基礎となる技術を鉄道総研で長年手掛けてきた。超電導磁石、リニアモーター、非接触給電……。リニアで培ったコア技術は他の分野に転用可能だ。
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卓球ロボットを人と融合、AIでプレーヤーの限界を引き出す
八瀬 哲志(オムロン技術・知財本部 研究開発センタ主査 プロジェクトリーダー)
機械でプレーヤーの「限界を引き出す」─。オムロンは、卓球ロボット「フォルフェウス」の最新版(第6世代)に人工知能「メタAI」を搭載した。ゲーム企業のスクウェア・エニックス(スクエニ)がゲームの進行制御用に開発した人工知能(AI)技術だ。
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「格安ロケットで巨大市場を獲りにいく」インターステラ社長
稲川 貴大(インターステラテクノロジズ 代表取締役社長)
ロケットの開発と打ち上げを手掛けるインターステラテクノロジズ。精力的に進める超小型衛星打ち上げロケットの開発の背景には「今、飛び込まないと日本はこの市場から取り残されてしまう」との危機感がある。技術も人材もサプライヤーもそろう日本、チャンスは目の前にあると説く。
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桜前線のあたたかさ、聖火のトーチに凝縮
吉岡 徳仁(デザイナー)
桜前線があたたかさを運ぶ─。東日本大震災の被災地で得たひらめきが桜の花色をイメージしたアルマイト仕上げや継ぎ目のない押し出し成形に結実した。金属成形と燃焼装置のメーカーが力を発揮した「東京2020聖火リレートーチ」。デザイナーに話を聞いた。
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生分解性プラで極薄、発明は設定ミスから
小松道男(小松技術士事務所所長・ものづくり名人)
生分解性かつ植物由来のプラスチック、ポリ乳酸(PLA)100%で肉厚0.65mmの薄肉製品を射出成形。これができればPLAは1回利用のプラ製品に最適な素材になる。プラスチック・ゴムの国際展示会「K2019」(2019年10月16〜23日)で極めて困難と思われた成形を世界で最初に実演展示してみせたの…
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クルマの技術進化をデジタルで加速、マツダ20年以上の取り組み
木谷昭博(マツダ 執行役員 MDI&IT本部長)
マツダが誇る次世代エンジン技術「SKYACTIV(スカイアクティブ)」。その革新には設計とシミュレーションが一体化したモデルベース開発(MBD)の活用が不可欠だった。MBDの源流は20年以上前の経営危機を機に始まった開発・製造プロセスの革新「MDI(Mazda Digital Innovation…
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いつか「ホンダ」に、従業員14人の電動バイクメーカーglafit
鳴海禎造(glafit 代表取締役社長)
和歌山市に本拠を置く従業員14人の電動バイクメーカーglafit。クラウドファンディングで1億円以上を集めて華々しく登場したが、そのウラには中国製造の経験と5年の準備があった。これまで5社を起業してきた今年39歳の鳴海禎造社長にとって、電動バイクはあくまで最初のステップに過ぎない。目指す最終形は和…
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「データサイエンティストは現場に溶け込め」、ファブラボ立役者の思いとは
田中 浩也(慶応義塾大学 SFC研究所所長 環境情報学部教授)
3Dプリンターなどを備える市民工房「ファブラボ」の日本における立ち上げの中心人物である慶応大学教授の田中浩也氏。同氏らは現在、中小企業のデジタル化を推進する「ファクトリー・サイエンティスト」の育成に取り組んでいる。
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ティーチレス自動化で産業用ロボを制する
滝野 一征(MUJIN CEO 兼 共同創業者)
「すべての人に産業用ロボットを」をスローガンに掲げ、工場や倉庫での作業の自動化を狙って汎用の知能化ロボットコントローラーを提供するMUJIN。ばら積みピッキングの自動化を、しかもティーチレスで実現できるとして急成長を遂げている。