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品質と信頼性だけでは生き残れない

 ただし、昨今それだけでは通用しなくなってきています。コマツは、「品質・信頼性を通じて企業価値を最大化する」を企業理念に掲げてきましたが、今は競争の軸が変わってきているのです。

 1990年代初めごろは、日米欧の市場が世界市場の売り上げの約8割を占めていました。ところが、10年ほど前から新興国市場が爆発的に大きくなり、リーマンショック直後は7割にも達しました。そうなるとプレーヤーもメンバーも、求められているものも大きく変わってきます。

 従来、日米欧の大手建機メーカーは品質や信頼性を重視した製品を提供し、顧客も品質・信頼性と価格とのバランスをしっかり評価した上で買ってくれていました。製品が良ければそれなりの対価を払う。だからこそ、品質の良いもの、信頼性の良いものを我々はずっと造り続けてきたわけです。

 しかし、新興国市場では価格と価値のバランスが取れていません。より良いものが欲しいと言う一方でどんどん低価格化が進む。安売りで勝負する新しいプレーヤーもどんどん出てきて、品質や信頼性を置き去りにした商品を出すところも少なくありません。

 そんな中で品質と信頼性をベースとした企業活動を続けているだけでは、新しい競合他社と互していけません。しかも、そうした新興国の新規プレーヤーの技術レベルも上がってきています。

 従って我々は、価格競争力とは別のプラスアルファの「新しい価値」を追求し、それを顧客に認めてもらわなければなりません。顧客がこうなりたいとか、こうしたいとか思ってる将来像を、我々が一緒になって考え、実現していく。それが「顧客価値創造活動」なのです*1

*1 同社内では、「ブランドマネジメント活動」の名で展開している。

 顧客価値創造活動では、お客さんの課題を抽出しながら、これこれこうだから、こうじゃないですか、といった提案をします。顧客の要求も考慮しますが、顧客も考えていなかったような、先の先の話を議論していく。すると、「そういうことかもしれないな」といった反応が先方から返ってきます。

 そういうやり取りの中で、その顧客がどこを目指そうとしているのかを一緒に考え、ひいては企業や産業、社会が進むだろう方向、進むべき方向を見極めていきます。

 もちろん従来同様に製品の品質向上も続けます。市場のニーズを調査し、それに基づいて製品を開発・提供するといった取り組みはこれまでもやってきましたし、これからもやっていきます。しかし、それだけでは数年後には他社から似たような製品が出てきます。それを繰り返していても「ダントツ」の製品やサービスは出てきません。大切なのはその先なのです。

 その先では顧客自身もどんどん変化・進化していきます。我々のビジネスはBtoBですから、お客さんのお客さん、さらにその先のお客さんが誰で何をしたいのかを見極めていく必要があります。そうすれば、たとえ少々値段が高くても、顧客は「企業組織としてコマツと付きあっていこう」となります。