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70社以上の企業が参加し、総予算が100億円を越えるAM(アディティブ・マニュファクチャリング、付加製造)の研究コンソーシアム「AGENT-3D(エージェント3D)」を率いる。新技術の有用性を研究とデータで明確にし、迷う企業の背中を押して、導入と普及への道筋を作るのが、独フラウンホーファー研究機構の使命だと話す。(聞き手=中山 力、木崎健太郎)

写真:栗原克己
写真:栗原克己
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 フラウンホーファー研究機構はさまざまな産業分野をカバーする72の研究所で構成された応用研究機関です。研究所ごとにそれぞれ担当分野とアプローチが異なります。異なるアプローチで臨んだ結果として、研究分野が重なることもあります。AM(アディティブ・マニュファクチャリング、3Dプリンティング、付加製造)もそうで、フランホーファーの幾つかの研究所が、異なるスタンスで関わっています。

 AMでは、フラウンホーファー全体として取り組むプロジェクト「FutureAM」もあります。これは私が所属するドレスデンの材料・ビーム技術研究所(IWS)に加えて、ケムニッツの工作機械・成形技術研究所(IWU)、アーヘンのレーザー技術研究所(ILT)、ハンブルクの付加製造技術研究所(IAPT)の4研究所が主に関わっています。

 ILTはもともとレーザー技術の研究を手掛けており、そこからAMに派生したのだと思います。一方の我々IWSはもともと材料の研究所です。AMだけでなくインテリジェントマテリアルやデジタルツインによる材料開発の研究も手掛けています。

金属AM研究に25年の歴史

 IWSにおけるAMの研究には25年くらい前からの歴史があります。現在のAM研究の対象は8割くらい金属AMですが、樹脂やセラミックスのAMも手掛けています。セラミックスについては同じドレスデンにあるセラミック技術・システム研究所(IKTS)と共同です。

 IWSのAM研究は最初、レーザーを使った肉盛り溶接の委託研究で始まりました。その後、ラピッドプロトタイピング(RP)なども手掛け、この過程で「COAX」と呼ぶレーザー溶接用のヘッドの独自技術も生み出しました。溶接用金属粉末をレーザーと同軸で吹き出す技術で日本を含む世界中で使われています。

 そうした基礎の上でIWSのAM研究が本格化したのはおおよそ8年前、2012年ごろです。この頃、産業界からのAM活用要請に応えるためのコンソーシアム「AGENT-3D」の検討が始まったからです。

 実はその少し前くらいから(フラウンホーファーの顧客である)様々な企業からAMへのニーズが出てきていました。その1つが立体的な金属コーティングへの要望でした。一般的なコーティングは平面の上に層を重ねるだけですが、これを立体形状にしたいという共同プロジェクトの提案が、欧州航空宇宙局(ESA)や航空機エンジンのメーカーなどからあったのです。今から10年ほど前に始めた英ロールスロイスとの研究は、2018年にフラウンホーファー全体で表彰される成果も出しています。