マツダが誇る次世代エンジン技術「SKYACTIV(スカイアクティブ)」。その革新には設計とシミュレーションが一体化したモデルベース開発(MBD)の活用が不可欠だった。MBDの源流は20年以上前の経営危機を機に始まった開発・製造プロセスの革新「MDI(Mazda Digital Innovation)」だ。MDIプロジェクトに開始当初から携わる木谷氏に未来像を聞いた。(聞き手は中山 力)
設計の検討段階から3Dモデルを駆使し、シミュレーションを組み合わせ、試作や実験を極力廃して開発を進める。マツダの「モデルベース開発(MBD)」*1は次世代エンジン技術「SKYACTIV(スカイアクティブ)」など様々な新技術を生み出し、「内燃機関で世界の頂点に立つ」という目標に向けて、マツダの競争力を生み出す源泉になってきました。
源流となったのは1996年8月に全社プロジェクトとして始まった「MDI(Mazda Digital Innovation)」です。1996年といえばマツダがフォード傘下に入った年。マツダは1991年のバブル崩壊に端を発した経営危機に苦しんでいました。私自身は1980年代から試作部の中でCAMの開発などを手掛けており、その関係でMDIプロジェクトに携わるようになりました。
実は新人のころ当時の上司から、「CAD/CAMでどう業務を効率化できるか」を考えて「具体的な絵(未来構想)を描いてもってこい」と言われました、半年くらいかけて各領域の専門家に聞いて回り、「デザインから設計まで全部のデータを3Dにして、金型は全部機械で削る」という青写真を描いたのです。それを上司に見せたところ「10年後に実現してくれよ」と言われました。もちろん、当時の技術で実現できることに限りはありました。けれどもこの時に描いた「絵」は、その後の指針になりました。