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歴代の日産車23種をかたどった米菓「新型カキノタネ」が半年で10万個を出荷する予想外のヒット商品になっている。日産自動車と伊勢原市のコラボ企画で生まれた商品だが、菓子の製造に使う金型の製作も同社総合研究所が請け負った。本業のクルマ開発には程遠い内容のプロジェクトだったが同研究所には、協力するべき理由があった。(聞き手は山田剛良、木崎健太郎)

手前に写っているのが「新型カキノタネ」(龍屋物産、竹内製菓)写真:志田彩香
手前に写っているのが「新型カキノタネ」(龍屋物産、竹内製菓)写真:志田彩香
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 歴代の日産車23種の形をした米菓「新型カキノタネ」は、日産自動車テクニカルセンターに隣接する神奈川県伊勢原市の事業「伊勢原うまいものセレクト」の一環で、市内産業の活性化とPRを目的とする企画でした*1。ビジネス抜きの地元への貢献事業で、それが、約半年で10万個に迫るヒット商品になるとは思っていませんでした。当初は年間2万個売れたら御の字という話でしたから。

*1 2020年7月7日発売。販売場所は伊勢原市内の龍屋物産直売所、小田急電鉄伊勢原駅「駅ナカ クルリンハウス」、柏木牧場、大山ケーブル駅売店、圏央道厚木パーキングエリア(厚木市)など。

 米粉を練った生地を23種類の自動車の形に打ち抜く金型は我々、総合研究所実験試作部のメンバーが手掛けました。形に抜いた生地を焼いて味付けすれば“柿の種"が出来上がります*2

*2 柿の種の粒を形成する方法は、金型で生地のシートを抜く以外にもあり、現在主流になっているのは生地を押し出しながらプロペラのような回転刃物で切っていく方法。

 新型カキノタネは製菓メーカーが古い機械で作っています。既存の金型は50年くらい前に職人さんが手で削って作ったものだそうです。新たな金型を造りたいが今はそういう職人さん自体がほとんど居なくなって、新規で起こすのが難しくなっている。同時に20種類以上の異なる形を抜く金型を造った例もない。このコラボの企画元の龍屋物産(伊勢原市)が関係先に問い合わせても3種類ぐらいが限界という回答が来たそうです*3

*3 インターネット事典「Wikipedia」の「柿の種」の項は「形にバリエーションは無い」と言い切っている。

 企画は考えてみたものの、そのための金型をお願いしてもできるか分からない、いつになるかも分からない。そう悩みを打ち明けられて、逆に我々なら引き受けられるんじゃないかと考えたのがスタートでした。