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キヤノン電子の宇宙事業が本格化している。2020年10月に超小型人工衛星「CE-SAT-IIB」の打ち上げに成功。搭載の超高感度光学カメラでこれまで難しいとされてきた人工衛星による深夜の地表を撮像してみせた。21年1月には超小型人工衛星の販売も開始した。ほぼ全部品を内製した人工衛星で、世界を相手に宇宙事業に挑む。(聞き手は高市清治)

写真:加藤康
写真:加藤康
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 当社はかねて2030年に宇宙事業の売上高1000億円の実現、そのうち衛星関連で500億円という目標を掲げています。販売開始をアナウンスしたばかりでまだ正式な受注はしていませんが(21年1月時点)、今回の人工衛星販売開始のアナウンスには「当社は人工衛星からコンポーネントまで全て売ります」という意思表示の意味があります*1

*1 キヤノン電子のリリースによると、「CE-SAT-I」(外寸500mm×500mm×850mm、口径400mm光学望遠鏡搭載)、「CE-SAT-II」(同292mm×392mm×673mm、口径200mm、87mm光学望遠鏡搭載)、「CE-SAT-III」(同100mm×100mm×300mm)の3サイズを用意。光学望遠鏡や超高感度カメラ、太陽センサーなどのセンサー類や慣性基準装置といった衛星コンポーネント、既に軌道に投入している人工衛星「CE-SAT-I」の撮像画像なども販売する。

 当社の人工衛星は、姿勢をコントロールするリアクションホイールや太陽センサーなど重要部品は全て内製です。そのため同種の部品を海外から仕入れると1~2年近くかかる人工衛星の納期を3カ月程度に短くし、価格も抑えられます。人工衛星の価格を10億円以下にできれば、競争力は高くなると自負しています。

 「宇宙用の部品でなく、民生品ベースの内製品で問題は出ないのか」とよく聞かれますが、問題ありません。17年6月に打ち上げた超小型人工衛星「CE-SAT-I」は、約4年軌道上にあります。しかし今のところ、何の問題も起こっていません。

 コネクターなどは携帯電話に用いられるような小型部品を使っており、軽くて衝撃にも強い。10Gの加速試験でも良い結果が出ます。リアクションホイールはレーザープリンターのポリゴンミラーの製造技術で造っています。ポリゴンミラーは1分間に5万回転を5年保証する部品です。さらに1年間に2000個も製造しています。性能や品質が安定しており、価格も低廉です。

 宇宙用部品の方が高い精度を求められるという話もありますが、複写機にも極めて高い精度が求められます。フルカラーで100枚印刷するのには僅かな誤差も許されません。μm単位の精度と耐久性が求められます。人工衛星に応用しても問題ないのです。