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写真:呉島大介
写真:呉島大介
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山形県・山辺町にある金属加工の町工場が、TwitterなどのSNSを駆使して民生品の加工・販売という新事業に挑戦している。中でも購入者の横顔を反映させてオーダーメードで造る「ルビンの壺(つぼ)」は話題を呼んだ。そこには「金属加工を知ってもらいたい」との思いが詰まっている。

 ヒカルマシナリーは、私の父が1995年に、マシニングセンター(MC)1台とフライス盤1台ほどの設備で始めた会社です。これまで、もっぱら生産設備の機械部品の金属加工を手掛けており、今もそれは変わりません。

豪雨のチャリティーがきっかけ

 そんな当社が一般消費者向けの製品を加工・販売するようになったのは、2020年7月の山形豪雨がきっかけでした。私は、その年の4月に前職を辞めて山形に戻り、ヒカルマシナリーに入りました。山形豪雨があったのはその3カ月後。そのときにチャリティーグッズを造って売ろうと思い立ったんです。

 実は、18年7月の九州北部豪雨の際、チャリティーグッズを買って個人的に支援した経験がありました。ところが、山形豪雨の際にはそこまで目立った支援の動きがなかった。工場も床上までとはいかないものの浸水しましたし、近所には床上浸水した家がありました。しかし、特に当社のある山辺町の被害は他の地域のようにニュースなどで報道されませんでした。

 ところが、Twitterに水浸しになった工場の動画をアップしたところ反響が大きく、多くの励ましのコメントをもらいました。そこで、山形豪雨向けのチャリティーグッズがあってもいいのではないかという思いと、Twitterに寄せられた励ましの声に応える形で、豪雨の被害でも壊れなかった工作機械で簡単なペン立てを造って販売したのです。売り上げは全て豪雨のチャリティーに寄付しました。それが始まりです。Twitter自体もアカウントはその前に作っていましたが、実質的に使い始めたのは豪雨がきっかけでした。