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写真:栗原克己
写真:栗原克己
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コンピューター上でのシミュレーションで開発を効率化するモデルベース開発(MBD:Model Based Development)。自動車業界でのMBD活用を広げて協調開発を効率化すべく「MBD推進センター」が2021年7月に発足した。同センターの立ち上げを先導したマツダの人見光夫氏にMBDの意義と同センター設立の狙いを聞いた。(聞き手は中山 力)

MBD推進センターは、2015年度に経済産業省が立ち上げた「自動車産業におけるモデル利用のあり方に関する研究会」の活動を民間主体で継承するために設立した団体です。同研究会の活動は、自動車開発が複雑化する中、モデルベース開発(MBD;Model Based Development)が非常に有効であり、これをもっと積極的に活用しようというのが目的でした。

 当時、マツダは業界でもMBDの取り組みが進んでいました。MBDにはいろいろな捉え方がありますが、要はコンピューターを使って計算して開発するものです。どんな会社でも、ある1つの現象をMBDで再現しようとはしていたはずです。しかし、自動車の開発全体をMBDにしようという取り組みは、マツダが一番真剣だったかもしれません。

 というのも、マツダは財務的に苦しくて、実験のための試作品も造れないというような時期を、かなり長く過ごしていたからです。そのため、「ものがなくても計算ならできる」という思いがありました。

 シミュレーションを使った開発なんて誰でもやっているではないか、と思う人も多いはずです。しかし、本当にあらゆることをやろうとしているかというと、そうでもないのではないでしょうか。マツダでも全てできているわけではないですが、開発の全ての工程をコンピューターで計算できるようにモデル化することを目指しています。例えば、設計に配属する新入社員は、実験部門に1年間は在籍してもらい、実務に適用できるようなモデルを自分で作ってみるという研修を受けます。

 何か開発する際は、MBDのモデルまでを作成して成果になるという考え方を基本としています。例えば、排ガスをもう1回エンジンに吸い込ませるという技術を開発する場合、従来は主に制御グループでモデルを作成していました。しかし、私は実験グループの技術者が、制御に使えるようなモデルを作成しなくてはならないと思うのです。その技術によって排ガスをきれいにする、燃費を良くするといった目標があるのであれば、制御に使えるモデルまで作成しないと成果ではないはずです。こうした取り組みを続けて、マツダではMBDを浸透させていきました。