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写真:尾関祐治
写真:尾関祐治
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グーテンベルク(東京・大田)が開発した3Dプリンター「G-ZERO」は従来機の数倍という高速造形が売りだ。開発をリードした山口勇二氏は、「できないと思われていたことに挑戦しその解決策を探るのが技術者の醍醐味」と語る。同氏と、開発・製作に協力している極東精機製作所(東京・大田)の鈴木亮介氏に開発の経緯や狙いを聞いた。(聞き手は、吉田 勝、高市清治、中山 力)

今回開発した「G-ZERO」の特徴を教えてください。

山口:やはり速度ですね。プリントのスピードを上げることによって、いろいろな価値が高まるのが、最大のポイントだと思っています。早くプリントするだけでなく、スピードを落とせば、その分だけ品質を高められます。品質はそこそこでも、逆にスピードをぐっと上げて、従来の3分の1、5分の1といった短い時間でのプリントもできます。

 プリントヘッドの駆動速度が全く違います。同等クラスの既存3Dプリンターが50mm/s程度なのに対して、G-ZEROは最大500mm/sもあります。加速度も仕様上の上限は2万mm/s2と、一般的なものの10倍以上です。

 このスピードを実現できた要因は幾つかありますが、最も大きいのはプリントヘッドの駆動に、「CoreXY」*1と呼ばれるベルト駆動方式の機構を採用した点です。CoreXYは、モーターの動きを伝達するのにシャフトではなくベルトを使います。従って、可動部を大幅に軽量化できるんです。その上で、G-ZEROではプリンター本体の剛性を高めています(ニュースの深層「造形速度4倍の高速3Dプリンター、新機構の採用と可動部の軽量化が鍵」参照)。

*1 CoreXY
米Massachusetts Institute of Technology(MIT)ラボで開発された3Dプリンターのヘッド駆動機構。CoreXYの技術自体は公開されていて誰でも使える。

 単純にプリントヘッドの移動速度を速くするだけなら出力の大きなモーターを使えばいいんですが、可動部が重いと振動して印刷品質が悪くなります。逆に重い可動部を高速に動かしつつ振動を抑えようとすると、剛性を上げるために本体がどんどん重くなってしまいます。

 要はプリントヘッドを含む可動部の軽量化を図るのがポイントです。必要と思われているけれど実際にはなくてもいい部品を省いたり、肉抜きしたり、可能な限り必要な部品を密集させたコンパクトな設計を意識しました。

 そのために、樹脂部品の多くを3Dプリンターで造形しています。切削部品を使うと価格が上がるし、重くなりがち。板金部品なら安く簡単に造れますが、折り曲げて造るため形状の制約がある。3Dプリンターで造形することで、そういう制約を取り払って、小さく軽くできるんです。ヘッドに搭載しているエクストルーダー(樹脂を溶かして吐出する機構)も軽量化に注力しました。ですから、G-ZEROのエクストルーダーの質量は、同クラスのプリンターのそれの半分くらいしかありません。