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3Dプリンター用フィラメントでも実用化

 トチュウエラストマーは3Dプリンター用フィラメント(線状の樹脂材料)にも採用された。ホッティーポリマー(本社東京)の製品だ。こちらは単体ではなく添加材(補強材)として使う。トチュウエラストマーを2~5質量%加えたPLAで出来たフィラメント(耐衝撃性PLAフィラメント)である。

 PLAはバイオプラスチックの代表格だが、硬くて脆(もろ)いという性質がある。これに対し、トチュウエラストマーは軟らく弾力性を備えている。従って、PLAに混ぜると分散したトチュウエラストマーが衝撃吸収材として機能し、耐衝撃性を高める。

 例えば、トチュウエラストマーを5質量%加えたPLAは、単体のPLAに比べて耐衝撃性(シャルピー衝撃値)が1.5~2倍に上がる。同様の仕組みで軟らかさも増すことから、引っ張り破断伸び率*2は8倍に高まり、3Dプリンターで細かい造形品が造りやすくなる(図4)。細くても折れにくく、落としても割れにくいからだ。

図4 3Dプリンターで造形した網状の容器
図4 3Dプリンターで造形した網状の容器
バイオTPIを添加材として2~5質量%PLAに加えた耐衝撃性PL Aフィラメントで造形した。弾力があり、握っても割れずに復元する。
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*2 引っ張り破断伸び率 引っ張り始めてから破断するまでの伸びを示す値。

 トチュウエラストマーは疎水性であり、油に混ぜて粘度を高める増粘材にも使える。加えて、皮膚への刺激性もない。こうした特徴を生かしてクリーム状の化粧品としての開発も進んでおり、現在試作段階にあるという。

 では、なぜ日立造船が杜仲から工業材料を造るようになったのか。昭和50年(1975年)代、同社は深刻な造船不況に陥った。そこで生き残るために立ち上げ、成功した新規事業の1つが杜仲茶の製造・販売だった。

 その後、1990年代後半にバイオテクノロジーブームが起き、同社でも研究材料を探していた。すると、杜仲茶の中に、ゴム成分のような沈殿物を発見した。調べると、杜仲の茶葉にゴム成分があると分かった。これがバイオTPIだった。ここから材料開発が始まり今に至る。なお、飲料である杜仲茶の事業は2003年、事業の再構築により小林製薬に譲渡している。