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[2]腸

 土砂を運び出すポンプが模倣したのは、腸の動きだ。具体的には、筋肉の収縮と弛緩が波のように伝播する「ぜん動」と呼ばれる運動である*1。2019年12月、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と竹中工務店、中央大学が開発し、試作機を完成させた。

*1 人の腸は、管路の軸方向に伸縮する「縦走筋」と、半径方向に伸縮する「輪状筋」から成る。この2種類の筋肉が収縮と弛緩を繰り返すことで、腸は内容物を搬送する。ぜん動ポンプでは、人工筋肉が縦走筋、ゴムチューブが輪状筋に当たる役割を果たす。

人工筋肉で「ぜん動」を真似る

 ぜん動ポンプは、最小構成単位である「単体ユニット」を、必要な数だけ連結して使う(図1)。各ユニットの内部にある管路の容積を個別に制御してぜん動を模倣する仕組みだ。

図1 土砂搬送用ぜん動ポンプの試作機
図1 土砂搬送用ぜん動ポンプの試作機
写真は内径約114mm、長さ約1.4mの大型機。6基の「単体ユニット」を縦に接続してある。同ユニットは一番下のフランジを除き、上下方向に摺動するよう、左右のレールでガイドしてある。(写真:竹中工務店)
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 同ユニットは、直径が異なる2つの円筒部材の両端を金属製のフランジで固定した構造だ(図2)。円筒部材の主な素材は両者とも天然ゴムだが、内側が一般的なゴムチューブであるのに対して、外側は軸方向に伸びにくい繊維素材を内挿した人工筋肉になっている。人工筋肉とは、生体組織を機械的に模倣したアクチュエーターの一種。内挿繊維には、例えば炭素繊維やアラミド繊維などを用いるという。

図2 単体ユニットが内容物を持ち上げる様子
図2 単体ユニットが内容物を持ち上げる様子
単体ユニットに砂質土を充填して動作した際の様子(a)と、同ユニットの断面イメージ(b)。圧縮空気によって、空気チャンバーが膨張する際、半径方向には膨らむが、軸方向には収縮する(フランジの間隔が狭まる)。これは、人工筋肉に含まれる繊維素材が軸方向に伸びにくいため。空気チャンバーの膨張によるゴムチューブの管路の容積減少と、フランジ間隔の収縮の相乗効果によって内部の砂質土を押し出す。(写真a:竹中工務店、図b:中央大学への取材を基に日経ものづくりが作成)
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 こうした構造によって、単体ユニット内には2つの空間ができる。まず、ゴムチューブの内側がポンプの管路となり、両端の開放部が隣の単体ユニットとつながる。一方、人工筋肉とゴムチューブ、フランジに囲まれた円筒状の密閉空間「空気チャンバー」は、単体ユニットの駆動部となる。

 同チャンバーに圧縮空気を加えると、その容積が最大となるように人工筋肉やゴムチューブが変形する。この際、人工筋肉は断面円の直径が大きくなる方向には伸びるが、内挿した繊維の働きによって軸方向にはほとんど伸びない。その結果、人工筋肉は半径方向の外側へと膨らむ一方、単体ユニットの長さは収縮する(フランジの間隔が縮まる)。同時に、ゴムチューブは管路を閉塞するように内側へと膨らみ、容積を減少させる。