金属材料を積層造形する金属アディティブ・マニュファクチャリング(AM)/3Dプリンティングの市場は2030年に3兆円を超える─。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の技術戦略研究センター(TSC)は2019年2月、こうした予測を発表した1)。TSCが試算した現状の市場規模は、造形装置が1223億円(2017年)、金属粉末材料が110億円(2016年)だった。これに対して2030年には造形装置が6500億円、金属粉末が5000億~6500億円、そして造形品が約2兆円と、3兆円を超える市場になると予測している。
ジェットエンジンの部品で活用先行
金属AMの活用は部品単価が高く、軽量化のメリットが大きい航空宇宙分野で先行している。中でも実用化で一歩先を行くのが、米ゼネラル・エレクトリック(GE)で航空機用エンジン事業を手掛けるGEアビエーションだ。
例えば、航空機用ジェットエンジンに搭載する温度センサー「T25」のハウジング(図1)。同センサーは高圧コンプレッサーの吸気部に取り付け、圧力や温度を計測してエンジン制御システムへと伝えるものだ。2015年4月、GEの商用エンジンを構成する金属AM製部品として初めて米連邦航空局(FAA)の認証を取得した。
GEは航空機用エンジンの部品を製造する手段として金属AMの活用を広げており、前述したセンサーのハウジングだけでなく、エンジンのタービンブレードや燃料ノズルなどでも金属AM製部品を実用化。その活用範囲は航空機用エンジン以外の発電機器事業などにも広がっている。AMの適用とそれを前提とした設計によって、軽量化に加え、部品点数の削減による強度の向上や組立工数の低減といった効果が得られているという*1。
*1 例えば、フランス・サフランエアクラフトエンジンズのジェットエンジン「LEAP」の燃料ノズルでは、従来モデルに比べて25%の軽量化と5倍の耐久性向上を実現している。従来は鋳造と切削加工で多数の部品を造り、それらをろう付けや溶接で接合するという方法を取っていた。ろう付け/溶接の回数は25回から5回に減り、強度や精度向上にも寄与している。
GEにおける金属AM活用が本格化したのは、米モーリステクノロジーズ(Morris Technologies)という企業を傘下に納めた2012年だが、研究部門での技術開発の始まりは数十年前にさかのぼる。同社はAMを製造業の競争力を高める重要な技術と位置づけ、研究開発と適用の拡大を続けてきた。
2016年にはスウェーデンのアーカム(Arcam)、ドイツのコンセプトレーザー(Concept Laser)という金属AM装置メーカー2社を相次いで買収。この2社を傘下に置く「GEアディティブ」という専門組織も立ち上げ、自社内での活用拡大を加速すると同時に、そこで培ったノウハウなどを社外に提供する事業も開始した。2018年6月には日本でも、GEアディティブが事業展開を開始している。