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 欧米を筆頭に世界中で新型コロナウイルス感染拡大が深刻化する中、自動車業界を中心に異業種の製造企業による医療機器やマスクの生産および生産支援の動きが相次いでいる。感染拡大の影響で工場は生産停止や縮小に追い込まれており、本業のリソースを利用して、危機的状況への対応を図ろうとしている()。

表 医療用具・機器生産といった異業種による主な新型コロナ対応の取り組み(2020年4月22日時点)
社名 概要
ゼネラル・モーターズ 米国 米ベンテック・ライフ・システムズと協力して人工呼吸器生産
テスラ 米国 人工呼吸器生産を表明
トヨタ・モーター・ノース・アメリカ 米国 フェースシールド、マスク、人工呼吸器の生産および医療機器メーカーに対するTPSに基づく増産支援、寄付など
フォード 米国 米GEヘルスケアと協力して人工呼吸器生産する他、3Dプリンターでフェースシールドを生産
アウトモビリ・ランボルギーニ イタリア 医療従事者向けにシールド、マスクなど生産
アディダス ドイツ 3Dプリンターメーカーの米カーボン(Carbon)の装置などを活用してフェースシールドを生産
ヴァレオ フランス 人工呼吸器に必要な部品を調達するため購買管理チームを強化
エアバス 欧州 スペインの拠点で20台超の3Dプリンターを24時間態勢で稼働させてフェースシールドを生産
グループPSA フランス 人工呼吸器の機械部分の組み立て
セアト スペイン 自社部品を活用した人口呼吸器の設計と生産
ダイソン 英国 新型人工呼吸器「CoVent」を開発。英政府からの受注を受けて製造
ダイムラー(メルセデスベンツ) ドイツ 3Dプリンターで医療機器生産を支援
フェラーリ イタリア マラネッロ(Maranello)工場で人工呼吸器バルブと防護マスク用の付属部品を生産
フォルクスワーゲン ドイツ 3Dプリンターによるフェースシールド生産
アイリスオーヤマ 日本 角田工場で不織布マスクを生産し、従来比で3倍近い2億3000万枚/月を国内に供給
イグアス 日本 3Dプリンターで生産可能なマスクを開発し、設計データ(STL)を公開
島精機製作所 日本 同社の立体縫製用編み機向けにマスクの編成データを公開
シャープ  日本 三重工場で不織布マスク生産開始。3月末から出荷を開始
ソニー 日本 人工呼吸器の部品製造や組み立てなどを手掛ける
トヨタ自動車 日本 貞宝工場で3Dプリンターなど使いフェースシールドを生産。医療機器メーカーに対するTPSに基づく技術支援の他、同社およびグループ企業の工場で従業員向けマスクを生産
日産自動車 日本ほか 3Dプリンターで月産2500個のフェースシールド生産。人工呼吸器・人工心肺装置メーカーの支援として人材や不足部品の供給なども行う。海外工場でも同様の取り組みを実施
パナソニック 日本 自社のクリーンルーム設備を活用してマスクを生産
ホンダ 日本 鈴鹿製作所などでフェースシールドを生産。感染者搬送用の車両を提供
モリサキ 日本 簡易マスクの抜き型の提供およびマスクのデータを公開

 死者が世界最多となっている米国での動きが特に顕著だ。例えばトヨタ・モーター・ノース・アメリカ(TMNA)は、北米にある幾つかの設備を利用して、医療従事者向けにフェースシールドやマスク、人工呼吸器などを生産する。フェースシールドは、3Dプリンターを用いて製造するという(図1*1。マスクは既に生産準備を完了。人工呼吸器については、少なくとも人工呼吸器/呼吸器を生産する2社と、提携のための契約を決定している。

図1 北米トヨタが生産するフェースシールド
図1 北米トヨタが生産するフェースシールド
3Dプリンターを用いて生産する。(写真:TMNA)
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*1 最初の出荷先は、テキサス州ヒューストンの医療センターであるMDアンダーソン(MD Anderson)、テキサス大学の医療センターであるUTサウスウェスタンメディカルセンター(UT Southwestern Medical Center)の他、インディアナ州、ケンタッキー州、ミシガン州の病院という。

 さらに、TMNAのトヨタ生産システムサポートセンター(TSSC)が、医療機器/消耗品の生産能力増強に向けてトヨタ生産方式(TPS)のノウハウを提供。新型コロナウイルス感染症の検査を効率化するため、検査サイトのドライブスルー化を支援している*2

*2 TMNAは、病院や救急隊にマスクや安全ゴーグル、ブーツ/ブーツカバー、手袋、毛布などの寄贈もしている。

戦時下の法律も持ち出して動員

 米国の自動車業界ではこの他に、フォード・モーター(Ford Mortor)やゼネラル・モーターズ(General Motors)も医療機器生産に名乗りを上げた。フォードは、米GEヘルスケア(GE Helthcare)と人工呼吸器の生産拡大で協力すると発表。GEヘルスケアの既存の人工呼吸器の生産に技術面・生産面で支援する。7月の上旬ごろまでに5万台の人工呼吸器を製造する計画を打ち出している(図2)。

図2 フォードの人工呼吸器生産の計画
図2 フォードの人工呼吸器生産の計画
4月から生産を始め、100日で5万台を生産するとしている。(出所:フォード)
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 さらにTMNAと同様に3Dプリンターを利用して10万枚/月のフェースシールドを生産する他、米3Mと協力して電動ファン付きマスク(PAPR)の生産能力を高め、両社の部品を利用した製品の開発を進める。フォードの工場で生産する可能性があるとしている。

 GMは、米医療機器メーカーのベンテック・ライフ・システムズ(Ventec Life Systems)と連携するなどして既に人工呼吸器の生産・拡大を図っている。同社に対してはトランプ大統領が大統領権限で企業に協力を求める「国防生産法」に基づいて、米GMに人工呼吸器製造を要請した。国防生産法は、政府が民間産業を統制するために1950年に制定されたもので、もともとは朝鮮戦争への対応策だった。GMはそれ以前から人工呼吸器製造を表明していたが、要請に基づきさらなる増産体制を敷く。この他、米テスラ(Tesla)CEOのイーロン・マスク氏も人工呼吸器の生産を表明している。