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 出勤できない作業員、稼働しない工場、サプライチェーンの寸断──。こうした負の連鎖は、何も新型コロナウイルス感染症の流行だけが生むのではない。ここ数年、日本を立て続けに襲った大規模な豪雨被害もまた、新型コロナウイルスのパンデミックと同様にサプライチェーンを寸断して製造業を揺るがした(図1*1。敷地内が冠水して部品や製品を運搬するトラックが動けなくなる。工場が浸水し工作機械や電気室が稼働しなくなる。深刻な被害が、各企業にBCP(事業継続計画)の見直しを促した点でも共通する。

図1 2019年の台風19号の大雨による被害の様子
図1 2019年の台風19号の大雨による被害の様子
台風19号の大雨による阿武隈川の氾濫で浸水した福島県郡山市の様子。阿武隈川の奥にJR東北本線が見える。2019年10月13日に撮影。(出所:国土地理院)
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*1 2019年は、立て続けに豪雨や台風に見舞われ、甚大な被害が生じた。8月には九州北部で、豪雨によって家屋の全半壊が合わせて約1000棟に上るなどの被害が発生。9月には台風15号、10月には同19号が矢継ぎ早に日本列島を襲い、19号では家屋の全壊だけで3000棟以上に及ぶ甚大な被害を受けた。全国の大規模な工業団地や工場で、敷地内の水があふれる豪雨被害(内水)が発生し、サプライチェーンが寸断された。

 「最近、工場敷地の豪雨被害へのリスク評価依頼が増えている。多くの工場が、豪雨の際、水がなぜ敷地内にあふれるのか、どうすれば冠水を防げるのかが分からないという悩みを抱えている」。こう語るのは斎藤貴裕氏。日建設計シビル*2(大阪市)開発部門景観・環境部 環境防災グループ技術長だ。

*2 日建設計シビル 工場など産業施設の設計やコンサルティングを手掛ける。工場など事業敷地内の豪雨被害対策に関する調査・評価や改修計画にも携わる。2010年以降で21工場、48件の調査・評価や改修計画を手掛けている(2020年4月時点)。