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 「よくある技術力アピールを兼ねたプロモーションのつもりはない。やるからには純粋に製品として離陸させたい」ー。

 こう意気込むのは精密部品加工を得意とする由紀精密(神奈川県茅ヶ崎市)代表取締役社長の大坪正人氏。同社は2020年6月10日、設計から製造までを全て自社で手掛けた高級アナログレコードプレーヤー「AP-0」(エーピーゼロ)を受注生産すると発表、予約の受け付けを開始した(図1)。価格は200万円(税別)だ。

図1 由紀精密が開発した「AP-0」
図1 由紀精密が開発した「AP-0」
大きさは幅560×高さ209×奥行き353mmで質量は27.4kg。価格は200万円。カートリッジは含まない。(出所:由紀精密)
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 構成部品の大半はアルミニウム合金やステンレス鋼を削り出した一品もの。個別受注生産のため、高額な上に納期も約3カ月と長い。それでも問い合わせの数は予想以上だった。「反響はすごい。エンジニアからオーディオ愛好家まで、さまざまな問い合わせが来て驚いている」(大坪氏)。

 機械加工と設計開発を本業とする同社がなぜアナログレコードプレーヤーをゼロから造ったのか。開発を主導した同社技術開発事業部事業部長の永松純氏は、「オーディオ機器という新領域で『音で人を幸せにする』という価値に挑戦するのが面白そうだと思った」と話す(図2)。

図2 由紀精密の大坪正人氏(左)と永松純氏
図2 由紀精密の大坪正人氏(左)と永松純氏
(出所:由紀精密)
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