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 トヨタとホンダは急回復、日産は復調傾向だが赤字から抜け出せず─。新型コロナウイルス感染症拡大の収束が見えない中、2020年度上期(2020年4~9月)の大手自動車メーカーは明暗を分けた()。

表 主要自動車メーカーの2020年度上期連結決算
(出所:日経ものづくり)
表 主要自動車メーカーの2020年度上期連結決算
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 トヨタ自動車は業績を急回復させている。上期連結決算は、売上高が前年同期比25.9%減の11兆3752億円、営業利益が同62.8%減少の5199億円。減収減益だが、営業利益は当初(20年5月時点)の20年度通期(20年4月~21年3月)の予想(5000億円)を上回った。

 新型コロナ禍の影響で、20年度第1四半期(20年4~6月)の営業利益は139億円に落ち込んだものの、同第2四半期(20年7~9月)には5060億円の営業利益を稼ぎ出した。わずか3カ月で、当初の通期計画を上回ったことになる。全ての地域で営業黒字を確保した。

 決算会見で同社社長の豊田章男氏は、「新型コロナの影響が続く中、半期に5000億円超の営業利益の確保は一朝一夕では実現できない。これまでの取り組みによって、少しずつ強くなっている」と強調した(図1)。世界販売が予想以上に早く回復したのに加え、全社を挙げて取り組んだ「原価低減」と「諸経費の削減」が収益改善の要因である(図2*1

図1 決算について会見するトヨタ自動車社長の豊田章男氏
図1 決算について会見するトヨタ自動車社長の豊田章男氏
(同社のオンライン会見の画面をキャプチャー)
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図2 トヨタの20年度上期営業利益の増減要因
図2 トヨタの20年度上期営業利益の増減要因
諸経費の削減では、会議費や交際費、出張費、調査費、コンサルティング費などあらゆる項目にメスを入れたという。北米において、インセンティブ(販売奨励金)を抑制しながら多くの新型車を投入したことも収益改善に寄与した。(出所:トヨタ自動車)
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*1 トヨタの20年度上期の世界販売台数(連結販売台数)は、前年同期に比べて33.7%減少の308万6000台。第1四半期は前年同期比50%に落ち込んだが、上期には66.3%まで回復した。

 生産体制の改善も寄与した。新型コロナ禍で多くの工場が生産を止めたが、工場再開後には必要な数の車両を供給するため増産する必要があった。同氏は「生産停止の間に、現場が生産ラインのタクトタイム短縮に取り組んだ。これにより、再開後に人員を増やさず増産できた」と明かす。

 同年通期の世界販売台数と業績の見通しも上方修正した。販売台数は750万台(当初見通しは720万台)、売上高は26兆円(同24兆円)、営業利益は1兆3000億円(同5000億円)を見込む。同年度下期(20年10月~21年3月)だけで売上高は約14兆円、営業利益は約8000億円を稼ぐ強気の計画だ。