小型車のボディー骨格において、ホットスタンプ(高張力鋼板の熱間プレス材)の牙城が崩れた。日産自動車が新型「ノートe-POWER」のボディー骨格に高張力鋼板の冷間プレス材を適用したからだ。その1.5GPa級という引っ張り強さはホットスタンプ材と同等である。
ただし、冷間プレス材は強度が高くなると成形性が悪くなる。また、プレス成形後の反りが大きくなり、高い寸法精度を出すのが難しいという課題もある。日産はこれらの壁を、素材と成形法の改良で乗り越えた。
従来の小型車はホットスタンプ材が主流
先進運転支援システム(ADAS)の標準搭載などが進み、小型車の質量は増える方向にある。車両質量の増加は燃費規制への対応を難しくすることに加えて、「低燃費」という小型車の商品力を低下させる。また、小型車は衝突事故時の乗員の被害が、中大型車よりも大きくなりやすい。小型車には、中大型車と同水準の衝突安全性が求められる。
軽量化と衝突安全性を両立するためトヨタ自動車やホンダなどは、引っ張り強さが1.5GPa級のホットスタンプをボディー骨格に多用する。例えばトヨタの小型車「ヤリス」や小型SUV(多目的スポーツ車)「ヤリスクロス」は、センターピラーやフロントピラー上部に1.5GPa級のホットスタンプを使う。ボディー骨格に使用する1.5GPa級のホットスタンプの比率(質量比、以下同じ)は5.2%である(図1)。