ブリヂストンサイクル(埼玉県上尾市)が自転車リコールに苦しんでいる(図1)。同社が「一発二錠」搭載自転車343万台の無償部品交換を発表したのは2019年6月。20年11月末までの1年半を費やして約53万台を改修したが、それでも実施率は約15.4%である。リコール半年後の19年12月末の実施率約2.5%に比べれば長足の進歩といえるが、まだ全体の6分の1に満たない。
リコール対応は同社の収益に打撃を与えている。親会社であるブリヂストンは19年1~12月期の連結決算で、今回のリコールの関連損失として約74億円を計上した。ブリヂストンサイクルの決算数字は非公開だが、信用調査会社の東京商工リサーチ(東京・千代田)によると、同社の同期における単体売上高は約420億円。リコール費用の計上により赤字決算だったとみられる。
リコール対象である343万台は、今から17年以上前の03年9月から、約5年前の15年5月までの約12年間に製造された(表)。トレーサビリティーが確保しにくい一般の消費者向け製品に対するリコールである点が、同社を苦しめている。
ただし、自転車の耐用年数を考えると、343万台の多くは既に廃棄されている可能性がある。詳細は後述するが、同社はこの「推定廃棄数」を考慮して算出した「補正実施率」も見積もっている。こちらの数値は20年12月16日時点で88.6%となり、ずいぶんと印象が違う。1年半という短期間でこれほどの改修を実施した同社の努力を見ていこう。