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 新型コロナ禍にありながら、ダイキン工業(以下、ダイキン)が気を吐いている。中間決算(2020年11月)までに2020年度(2021年3月期)通期の業績予想を三度(みたび)上方修正。新型コロナウイルス感染症への基本対策として換気機能付きの空調機が顧客に支持されているのだ。「換気ができる唯一の家庭用エアコン(以下、エアコン)を展開するメーカー」(同社)として、“換気のダイキン"というキャッチフレーズまで同社はひねり出した。

 同社が開発した換気機能は、室外機で取り込んだ外気を室内機に送り、温度を調整してから室内に送風する*1。窓を開けて換気しなければならない通常のエアコンに対し、外気を室内に供給して換気しながら、同時に冷暖房できる点が特徴だ(図1)。

*1 給気はするが排気機能は持たない。そのため、換気を実現するにはエアコンを作動させるだけではなく、排気のために窓やドアを開けておくなどの対応が必要となる。
図1 室外機に設置した室内給気用ファン
図1 室外機に設置した室内給気用ファン
手前の白い部品。外気を取り込み、室内機に送ることで換気を実現する。(出所:日経ものづくり)
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 新型コロナ禍の中、同社代表取締役社長兼最高経営責任者(CEO)の十河政則氏は気づいた。「そういえば、うちのエアコンには換気機能が付いていたな。それなら、全面展開せい」。鶴の一声で、同社は今後2年間で30種類超の空調・換気機器の新製品投入を決定。注目は、低価格な量販機にまで換気機能を搭載した新製品を展開する点だ。しかも、これまで1年半かかっていた開発設計を6カ月に短縮するという。具体的には、20年9月の企画立案から半年後の21年3月に量販機「V」シリーズを発売する計画だ(図2)。

図2 3倍のスピードで開発設計する「Vシリーズ」
図2 3倍のスピードで開発設計する「Vシリーズ」
上段の右。低価格の量販機ながら換気機能を搭載する。(出所:日経ものづくり)
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