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 三菱電機で設計不正が発覚した(図1)。リコールは避けられず、賠償金(リコール対策費用)の支払いは必至だ。それだけでは収まらず、自動車メーカーからの失注(受注を失うこと)の事態に陥る恐れもある。

図1 三菱電機本社の外観
図1 三菱電機本社の外観
(出所:日経クロステック)
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車載ラジオが欧州RE指令に不適合

 設計不正の対象は、自動車メーカーが欧州市場で販売するクルマに搭載する車載オーディオ機器用ラジオ受信機(以下、車載ラジオ)。欧州委員会が定めた、欧州域内のラジオなどの電波受信器に対する指令「欧州無線機器指令(Radio Equipment Directive、以下、欧州RE指令)」に適合しない製品(以下、不適合品)を、それと知りながら顧客である自動車メーカーに出荷し続けていた。不適合品の出荷台数は33万5238台に及ぶ。

 不適合品が与える使用上の影響はそれほど大きくはなく、「欧州地域でAMラジオを受信した際に音声にノイズが混入する可能性がある」と三菱電機は説明する*1。だが、「リコールは避けられないのではないか。しかも不正が原因なので、賠償金の支払いはその100%を三菱電機が負うことになるだろう」(元トヨタ自動車の設計者)。

*1 不適合の項目は、(1)伝導雑音性能と(2)長波/中波のSN比性能。前者では0.6dB超過し、後者では最大で5dBの未達があった。

 それだけではない。三菱電機は設計不正の発覚以降、車載ラジオの生産・出荷を止めた。これにより、自動車メーカーがクルマを生産できない分の損害賠償まで三菱電機は負わされる可能性がある。

 だが、これらの賠償金以上に深刻なのが、失注のリスクである。今回の設計不正の経緯を追うと、三菱電機の「悪質さ」が透けてみえる。悪質だと言える点は3つある。[1]「偽の適合宣言書」を自動車メーカーに提出、[2]改造品での適合性評価試験の受審、[3]不適合品の生産・出荷を継続、である。顧客である自動車メーカーに不適合品を納めた上に、偽装・隠蔽工作まで行っていたからだ。