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 OKIデータ(東京・港)はカラーLEDプリンターの戦略新機種の生産を同社タイ工場でリモート立ち上げした。新型コロナウイルス感染症(COVID-19、以下新型コロナ)の影響で国内技術者の現地出張が事実上不可能になる中、オンライン会議システムを活用して現地スタッフによる課題の抽出と解決を支援し、量産ラインを立ち上げる手法を模索(図1)。試行錯誤の末に日本人スタッフを出張させた際と同等の製品品質と作業効率を実現した。当初予定通りの2020年11月には現地スタッフだけで新規生産ラインによる最終量産試作を実施。21年2月には本格的な量産に入った*1

図1 OKIデータ高崎事業所の「コックピット」
図1 OKIデータ高崎事業所の「コックピット」
ここでタイ工場と打ち合わせる。周囲はホワイトボードで囲んであり、課題などを随時書き出すようにしている。(出所:日経ものづくり)
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*1 COREFIDO C650dnwの発表時には2020年11月出荷予定としていた。20年4月に第1段階の試作、同10月に第2段階の試作を経て、予定通り11月にPSUを実施した。ただしPSUで改善点が見つかったため、「PSU2」を21年2月に実施して量産に移行した。

高崎事業所にオンライン指令所を設置

 OKIデータがタイ工場〔OKI Data Manu-facturing(Thailand)、アユタヤ県ロジャナ工業団地〕で生産を始めるのは20年10月22日発表のカラーLEDプリンター「COREFIDO C650dnw」(図2)。「この機種の拡販が社運を握る」と意気込む戦略機種だ。

図2 OKIデータの新型カラープリンター「COREFIDO C650dnw」
図2 OKIデータの新型カラープリンター「COREFIDO C650dnw」
2020年10月22日に発表。タイ工場での最終量産試作を予定通りに実行した。(出所:OKIデータ)
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 COREFIDO C650dnwの製品仕様は19年末までに固まっており、20年2月からタイ工場で生産準備、第1段階の試作を始めていた。問題を洗い出して次のステージに進もうという矢先にコロナ禍が襲う。20年3月には生産ライン立ち上げを支援する技術者の出張が不可能になった。

 OKIデータはこれまで、生産準備の過程で2段階の試作ステージを経てラインを確立。量産試作「PSU(Production Start Up)」で最終確認して問題がなければそのまま量産に移行する(PSUの生産品が初回出荷製品になる)ステップを踏んでいた。

 ライン立ち上げ時には日本から設計、生産技術(生産設備開発、加工技術)、品質、調達の各部門から選ばれたメンバーがチームを組んで現地に出張。日本人チームが試作を含む全過程で課題の洗い出しと原因の解明、対策を実施していた。

 技術者の現地出張が不可能になったOKIデータは、それでも量産立ち上げを予定通りに実行するにはどうしたらよいかを考えた。出てきたのはWeb会議システムを活用して支援するアイデアだ。設計部門がある高崎事業所に大型ディスプレーを備えた指令所「コックピット」を設置。ここで随時タイ工場と打ち合わせができるようにした。

 しかし、それだけではライン立ち上げ作業は難しかった。現地の担当者は何を確認すべきかが分からず、問題の把握もできない。一方、現地に行けなくなった日本の担当者は、設備や試作品の細かい状況を「現地・現物」で十分に把握するすべを持たない。この両方を解決する工夫が必要だった。