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2050年カーボンニュートラル(炭素中立)時代に突入し、世界で電気自動車(EV)シフトの動きが活発化している。過去に何度も膨らんでははじけたEVシフト。今度こそは本物か─。トヨタ自動車でエンジンの開発を手掛けた後、環境負荷軽減を踏まえた次世代車のロードマップの作成にも携わった愛知工業大学工学部客員教授(工学博士)の藤村俊夫氏に聞いた。(聞き手は近岡 裕)

世界で新車に対するエンジン車の販売禁止(以下、エンジン車廃止)の動きが見られる。

藤村氏:2015年に発覚した、ドイツVolkswagen(フォルクスワーゲン、VW)によるディーゼルエンジン車の排出ガス不正問題の反動が大きい(図1*1。この問題で、ガソリンエンジン車も含めて「エンジン車は環境に良くない」というイメージが欧州市場に広まり、ドイツが30年、フランスと英国が40年のエンジン車廃止を打ち出した。

図1 VWを揺るがしたディーゼルエンジン排ガス不正
図1 VWを揺るがしたディーゼルエンジン排ガス不正
不正発覚の翌年に、現VW社長のHerbert Diess氏(写真奥、当時はVWの乗用車部門のトップ)が、ドイツの国会議員(写真手前)に対して排ガス不正への技術的対策を説明しているところ。撮影は2016年2月。(出所:VW)
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*1 「ディーゼルゲート事件」と呼ばれる。Volkswagenが2007年に量産を開始した排気量2.0Lの4気筒ディーゼルエンジン「EA189」のエンジン制御システムに、米国環境保護庁(EPA)の排出規制を不正に回避するソフトウエア「ディフィートデバイス(無効化装置)」が含まれていた。試験中は窒素酸化物(NOx)排出量を規制値以下に低減し、通常走行時には規制値の10~40倍のNOxを排出していたことが発覚した。

 そこに拍車をかけたのが、19年に開催された国連気候行動サミットによる「30年に二酸化炭素(CO2)45%減、2050年にCO2ゼロ」という目標の表明だ。これに慌てたのか、英国がエンジン車廃止を30年に前倒しし、35年のハイブリッド車(HEV)廃止を打ち出した。米国のカリフォルニア州も35年にエンジン車廃止を表明した。こうした動きを見て、世界に後れを取っていると焦った日本が、30年半ばのエンジン車廃止を宣言した。