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 VAIO(長野県安曇野市)が2021年2月に発表した14インチ型ノートパソコン「VAIO Z」。同社のフラッグシップモデルである。特徴の1つが、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)で造った外装(ボディー)だ。VAIOでは過去にもCFRPを採用しているが、今回はその適用範囲を大幅に拡大した。

 CFRPを採用したVAIO Zの外装部品は3つ(図1)。底面(ボトム)、キーボード周囲を覆うパームレスト、ディスプレー裏の天板である。天板の両端は2回折り曲げた「コの字形」となっており、ディスプレーの左右のベゼル部分も一体化している。加えて天板のヒンジ側を鋭角に折り返し、折り曲げ部の両端を塞ぐような袋状にしている。

図1 「VAIO Z」のCFRPボディー
図1 「VAIO Z」のCFRPボディー
底面、キーボード周囲を覆うパームレスト、液晶ディスプレー裏の天板の3つの部品にCFRPを採用した。天板には、液晶ディスプレー左右のベゼルを一体化している。(写真:スタジオキャスパー)
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 こうした形状をCFRPで実現したのは今回のVAIO Zが初めて。CFRP部品としての剛性を上げて軽量化や薄型化の効果を高めるのが狙いだ。実現に当たっては、平面状のCFRPを折り曲げたり袋状にしたりといった立体成形技術の開発が不可欠だった。加えて、従来はなかった形状に対応するため、組み立て方法の工夫も必要だった。

材料だけでなく形でも剛性アップ

 これまでもVAIOでは、連続繊維の熱硬化性CFRPにこだわってきた*1。繊維の方向を調整すれば強度のメリハリも付けられる。今回はそれに加えて、形状の工夫でも剛性を高めようとした。

*1 特徴的なのが、板材の表裏には炭素繊維を配置し、強度にあまり寄与しない中央部分は樹脂だけにしたサンドイッチ構造としている点。表裏の炭素繊維も多層構造になっており、炭素繊維を1方向に並べた「UD(単一方向性)カーボン」を基本に、その方向を変えながら積層している。このような構造とすることで、VAIOのCFRPは質量当たりの弾性率(剛性)がアルミニウム合金やマグネシウム合金の約2倍と高い。

 構造材の剛性は、断面形状(断面二次モーメント)でも高められる。平面のままでは曲げやすくても、端部を曲げたり、湾曲させたりして断面形状を変えれば曲げにくくなる。従来のVAIOでもそうした工夫は取り入れてきたが、連続繊維のCFRPではこの「断面形状の変更」が難しかった。

 理由の1つが、CFRP成形時の曲げにくさである。成形ではプリプレグ(炭素繊維に樹脂を含浸させたもの)を熱プレスするが、薄いシートとはいえ曲げ部分の内面と外面では長さが異なってくる。無理に曲げると、炭素繊維が切れたりしわが寄ったりしてしまう。曲率半径の小さな「エッジが立った曲げ」も難しい。

 「コの字」や袋状に曲げるような形状を熱プレスで実現するのもハードルが高かった(図2)。上下に型を動かす熱プレスでは、オーバーハング部(型の動く方向に対してアンダーとなる部分)が潰れてしまうため、従来は緩やかな湾曲や絞り形状のような形に限られていた。

図2 VAIO Zの天板
図2 VAIO Zの天板
写真は、成形後に不要部分を加工で取り除いた後の状態。(写真:スタジオキャスパー)
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