三菱電機は2021年10月1日、名古屋製作所可児工場(岐阜県可児市)と長崎製作所(長崎県時津町)に絞った、品質不正問題の調査報告書(以下、報告書)を外部調査委員会から受領した(図1)。可児工場では米国の安全規格であるUL規格*1に適合していない電磁開閉器関連製品の、長崎製作所では鉄道車両の空調装置などの検査不正が発覚していた。今回の調査により、新たに可児工場で4件、長崎製作所で4件、計8件の新たな品質不正が明るみに出た。
米国の第三者安全科学機関であるUnderwriters Laboratories(UL)が策定する製品の安全規格。
今回の報告書を受けて、同社は再発防止策を含む3つの改革、[1]品質風土改革、[2]組織風土改革、[3]ガバナンス改革を進めるという。三菱電機本体の調査は22年4月をめどに完了させ、その後は関係会社を調査するという。なお、同社は同日、柵山正樹会長の引責辞任も併せて発表した。
性能不正の疑いを見逃した報告書
三菱電機の内情を知る関係者と製造業に詳しい経営コンサルタントは、報告書に対して「落第点」などと厳しい評価を下す。特に、性能面で明らかに技術的に説明がつかない製品の例が見つかっているにもかかわらず、「性能不正の有無」に関する言及がない点が低評価の理由だ。
例えば、名古屋製作所可児工場と長崎製作所の2工場で新たに8件の検査不正が見つかった一方で、性能不正に関する情報が一切出てこない*2。