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 自動車は減産、工作機械は復活─。2021年7~9月期の決算発表での業績予想の傾向は、業界によって大きく異なる様相を見せた。自動車業界は業績こそ悪くないが、半導体・部品不足による生産調整の影響で減産を余儀なくされ、業績予想を一部下方修正しているメーカーもある。一方、需要が戻ってきた工作機械業界は復調傾向が鮮明だ。

通期販売台数予想、軒並み下方修正

 自動車メーカーの決算発表に共通しているのは、部品不足による減産とそれに伴う世界での販売台数の下方修正である()。トヨタ自動車は、21年度(21年4月~22年3月)通期の連結世界販売台数(世界販売台数)見通しを、前回(21年5月)に比べて15万台減の855万台とした。主力市場である日本と北米、欧州で販売を減らす。「21年8月以降の生産調整(減産)の影響が大きい」(同社取締役執行役員の近 健太氏、図1)。

表 自動車メーカーの2021年度通期販売台数・業績見通し
(出所:日経ものづくり)
表 自動車メーカーの2021年度通期販売台数・業績見通し
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図1 トヨタ取締役執行役員の近 健太氏
図1 トヨタ取締役執行役員の近 健太氏
(出所:オンライン会見の画面をキャプチャー)
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 一方、同年度通期の業績については営業利益を上方修正した。前回に比べて3000億円増の2兆8000億円を見込む。「為替レートを円安に見直したことが大きい」(今氏)。営業収益は30兆円で前回見通しを据え置いた。ただし「固定費は増加しており、円安を除けば実質下方修正」(同社)と明るい材料とは言い難い。

 ホンダも、21年度(21年4月~22年3月)通期の世界販売台数(四輪車、グループ販売台数)の予想を、前回計画(21年8月時点)に比べて65万台少ない420万台に下方修正。「半導体不足などによる減産は、当初の想定を上回った」(同社副社長の倉石誠司氏)。

 同社は販売台数の下方修正を受けて、21年度通期の業績予想も下方修正した。売上高(売上収益)は前回計画比で8500億円減の14兆6000億円、営業利益は同1200億円減の6600億円を見込む。

 日産自動車も同様だ。前回見通し(21年7月)は440万台としていたが、60万台少ない380万台を見込む。売上高(持ち分法適用ベース)も9兆7500億円から8兆8000億円へ下方修正した。一方、営業利益については、前回計画比で300億円増の1800億円と上方修正した。

 マツダも21年度通期で17万台の減産の見通し。その影響を受けて、同年度通期の世界販売台数を、前回(21年7月)見通しに比べて9万8000台減の131万1000台に下方修正している。通期業績予想では、売上高を期初予想から2000億円減の3兆2000億円に下方修正。営業利益は650億円と据え置いた。

 ただし、収益自体は悪くない。21年度上期(21年4~9月)の業績をみると多くのメーカーが前年比で増収増益だ。例えば、トヨタの場合、売上高(営業収益)は前年同期比で36.1%増の15兆4812億円、営業利益は同236.1%増の1兆7474億円。ホンダは、売上高が前年同期比で21.0%増の6兆9882億円、営業利益は同161.2%増の4421億円となっている。日産の売上高は同27.6%増の3兆9470億円、営業利益は1391億円である(前年同期は1588億円の赤字)。販売台数が増えたのに加え、固定費の削減や為替の円安が寄与している。