大阪大学基礎工学研究科システム創成専攻助教の小山佳祐氏は、同氏が開発した「近接覚センサー」などを軸にしたベンチャーを設立してロボットに応用する事業を開始する。ベンチャーは2年以内をめどに設立する計画。現在ロボットで多用される画像センサーや、圧力センサーなどでは検出が難しい接触や接近を検出する技術を利用して、素早く複雑な動きができるロボットの開発を狙う。
近接覚センサーは、ロボットが物体をつかもうとする際などに、ハンドなどが対象物体へ数cmまで近づいた時点で、非接触で対象物を検知したり、姿勢を把握したりするためのセンサー(図1)。視覚とも触覚とも異なり、相当する感覚が人間にはなく、現状のロボットにもほぼ見られない感覚であるため、「近接覚」と呼んで区別する。
従来のロボットは、視覚に相当する画像センサーで対象物体の位置や姿勢を特定した後にハンドを動かすものが多い。この方法では位置特定後に物体が移動した場合につかみ損ねてしまうだけでなく、素早い把持動作の実現が難しいという短所がある。ハンドが対象物体に近づくにつれて画像センサーの視界をハンドが遮り、対象物体を認識できなくなるため、接触を検知するまでハンドを低速で近づけざるを得なくなるからだ。
この視覚・触覚を補うのが、近接する物体の位置や姿勢を検知する近接覚。「人間にない感覚だが、ロボットは必ずしも人間をまねる必要はない」(小山氏)として研究を進めてきた(別掲記事参照)。具体的な実現方法は、LED(発光ダイオード)から光を対象物に投射して、戻ってきた光を受光部で検知するもの。近接覚センサーの受光部を取り囲むように8個のLEDを配置し、どのLEDからの光がどのように戻ってくるかのパターンにより対象物体の位置と姿勢を算出する。
小山氏は既に近接覚センサーを応用して、シート状の紙やマスクなどを1枚ずつ短時間で取れるロボットなどを開発、展示会に出展するなどしている(図2)。