2022年3月1日、トヨタ自動車の国内全工場(14工場28ライン)が稼働停止した(図1)。取引先の部品メーカーである小島プレス工業(愛知県豊田市)のサーバーがサイバー攻撃を受けてダウンしたのだ。トヨタは連係関係にある国内工場システムへの影響を考慮し、工場の稼働停止を決定。トヨタの高岡工場や元町工場などに加えて、ダイハツ工業の京都(大山崎)工場、日野自動車の古河工場・羽村工場も稼働停止した。
今回、小島プレス工業が受けたのはランサムウエア(身代金要求ウイルス)の攻撃。同社は影響範囲の特定などのため、稼働する社内サーバーをいったん全て停止した。
1万3000台の生産に遅れ
小島プレス工業のサーバーがダウンしたのは同年2月26の21時すぎ。翌27日昼にかけて、社内のすべてのサーバーを停止した。小島プレス工業は、サイドモールやコンソールボックスといった自動車の内外装の樹脂部品をトヨタに納めている。小島プレス工業内での部品製造はできるが、社内サーバーの1つがトヨタへの部品の納入を担っていたため、その処理ができなくなった。トヨタからは27日までに、情報システムやBCP(事業継続計画)担当者など数名が応援にかけつけて、復旧活動を続けた。
最終的には小島プレス工業が3月1日に暫定的なネットワークを立ち上げて、取引処理をできるようにした。ここでいう暫定ネットワークとは、これまで使用していた本来のネットワークとは別の環境に構築したもの。それを使って、電子カンバンなどの情報をトヨタとやりとりできるようにした*1。これによって翌3月2日には、トヨタは国内全工場の稼働を再開した。全工場停止は1日(2直分)で済んだものの、約1万3000台に生産遅れが発生した*2。