オーストラリア連邦裁判所は2022年4月7日(現地時間)、トヨタ自動車(以下、トヨタ)のディーゼルエンジンの部品であるDPF(ディーゼル・パティキュレート・フィルター)に対して「欠陥」を認める判決を出した。集団訴訟(クラスアクション)に対する判決であり、オーストラリア放送協会(ABC)などの報道によれば、対象は15年10月~20年4月に販売されたピックアップトラック「ハイラックス」とSUV(多目的スポーツ車)「フォーチュナー」、SUV「プラド」の3車種、合計26万4000台以上だ(図1)。
この欠陥により、クルマ1台当たり7000豪ドル(65万1000円、1豪ドル=93円換算)以上の価値が下がったという*1。
判決を受けてオーストラリアToyota Motor Corporation Australia(トヨタモーターコーポレーションオーストラリア)は、「我々は一審の判決には同意していない」とした上で、こうコメントした。「DPFの不具合を経験したお客様に対し、一貫して真摯に向き合って、車両については無償での修理対応をしてきた。一方で、影響を受けた一部のお客様に不便や迷惑をおかけしたことについておわび申し上げる。DPFの不具合を認識後、対象のお客様に対し、有効な対策を提供すべく、継続的に取り組んできた。その都度、お客様の視点に立ち、技術的な根拠に基づいた改善策を実施し、お客様の懸念の解消に尽力してきたと考えている。今後は一審判決について慎重に検討した上で、対応していく」。
一方、日本のトヨタ本社はこの判決について、「現在、裁判所の判決内容を精査しているところ。トヨタはどの段階においても、お客様の不安を解消するために、お客様の視点に立ち、技術的な根拠に基づいた改善策を実施してきたと考えている。トヨタとしては一審判決を慎重に検討した上で、今後のコメントを出していく」とした。
原告側が主張する「欠陥」とは、「DPFから煙が出て、燃費が低下し、エンジンの摩耗が大きくなった」というものだ。あくまでも限られた情報からの分析だが、自動車のエンジンに詳しい専門家(以下、専門家)は「安全・安心上の問題はないため、リコールにはならない。ただし、不利益を被ったと顧客に思わせたのは事実。開発設計に詰めの甘い点があったのかもしれない」とみる。