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 電気自動車(EV)に使う駆動用モーターの開発で、希土類(レアアース)の不使用や使用量削減に向けた取り組みが再燃している。自動車メーカーの電動化戦略や、近年の原材料価格の高騰などを受け、リチウムイオン電池だけでなく、モーター材料の供給不足への懸念が出てきたからだ*1。レアアースを全く使わないモーターを開発するのか、あるいは、多くの電動車両が採用する永久磁石型同期モーター(以下、永久磁石式モーター)でレアアースの使用量を減らしていくのか。サプライヤーによって対応が分かれる。

*1 例えば、トヨタは2030年にEVの世界販売台数を350万台にする目標を掲げる。欧州では、ドイツVolkswagen(フォルクスワーゲン、VW)や欧州Stellantis(ステランティス)が同年にEVの世界販売を500万台規模とする計画を示している。VWは2030年に世界販売台数の5割をEVにする方針。

“レアアースフリー”選択肢に

 レアアースを使わない駆動用モーターの開発に着手したのが、フランスValeo(ヴァレオ)や日本電産だ。

 ヴァレオは、フランスRenault(ルノー)と共同で、永久磁石を使わない巻線界磁モーターを開発する。ヴァレオがステーター(固定子)、ルノーがローター(回転子)の開発を担当する。2027年から量産する計画だ(図1)。

図1 ルノーのモーターを生産する工場
図1 ルノーのモーターを生産する工場
ヴァレオなどと共同で開発する巻線界磁モーターの最高出力は約200kWである。(写真:ルノー)
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