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 クルマ1台やコンテナといったような大きな対象物の内部を丸ごと計測できる産業用X線CT装置の実用化に向け、装置メーカーやユーザー企業、大学、公的研究機関による検討が始まった。まだ調査段階だが「2021年の運用開始を目指す」(東京大学大学院工学系研究科精密工学専攻教授の鈴木宏正氏)と関係者の鼻息は荒い。個別企業では導入・維持が困難なため、公的機関やコンソーシアム、民間中心の計測サービス企業などによる導入や運用が想定される。

9月に中間報告を取りまとめ

 実用化に向けた検討は、研究産業・産業技術振興協会(JRIA)が2018年4月から1年間の調査開発事業として立ち上げた「産業用大型X線CT装置導入に関する戦略策定」の委員会で進んでいる*1。同委員会は既に3回の会合を開催し、同年9月には中間報告を取りまとめた*2

*1 機械システム振興協会が調査開発事業として実施する「イノベーション戦略策定事業」の2018年度のテーマの1つ。研究産業・産業技術振興協会に委託されている。
*2 2018年10月にはワークショップを開催し、中間報告で取りまとめた内容などを公開し、広く意見を集めて後半の検討に生かす。

 調査段階のため具体的な仕様や運営体制などは未定だが、基本的にはガントリー式の大型X線CT装置の開発と運用を目指す(図1)。X線源と検出器を支持する円環状のレールを垂直に立て、その中央にワークを配置する方式である。1断面を計測するごとに、円環の中心軸方向にワークを動かして全体を計測する。

図1 ガントリー式X線CT装置のイメージ
図1 ガントリー式X線CT装置のイメージ
計測対象物の周囲で、円環状のレールに対向配置したX線源と検出器を同期して動かす。大きく、重い計測対象物の移動量が少なくて済み、計測時間の短縮が期待できる。(出所:東京大学)
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 大型X線CT装置としては、ドイツのフラウンホーファー研究機構が自動車1台を計測できるような装置を実用化1)。自動車メーカーのほか、文化財を補修する公的プロジェクトなどでの活用が進んでいる。この装置では、向かい合わせに配置したX線源と検出器の間で計測対象物を回転させ、X線源と検出器を上下に動かしていく方式*3。このため、自動車を撮影する場合などには縦に吊るすといった事前準備が必要になる。重力による影響もゼロではない。

*3 フラウンホーファー研究機構でもガントリー方式のX線CT装置を開発し、設置する計画がある。

 これに対してガントリー方式では、自動車であれば計測位置まで走行させるだけで済む。ライン生産のように連続的な計測にも対応しやすく、計測時間の短縮が期待できる。