経済産業省と厚生労働省、文部科学省の3省は2019年6月11日、「2019年版 ものづくり白書(平成30年度 ものづくり基盤技術の進行施策)」(以下、白書)を共同でまとめた*1(写真)。白書の中で、日本の製造業が競争力を維持し、強化する方策として、「製品(もの)だけではなく顧客ニーズに特化したサービスの提供」や「AI(人工知能)・IoT(Internet of Things)などのスキルを持つ人材の確保と組織づくり」などを提起した。
*1 政府は同日、閣議決定した。
「製造業が日本経済を下支え」
白書ではまず、改めて平成期(1989~2019年)の日本の製造業を総括。1990年代のバブル経済崩壊や2011年の東日本大震災など多くの困難に直面した点を指摘し、中国をはじめとする新興国の台頭や急速な円高などによって厳しい時代が続いたとする。
こうした条件下で製造業のGDP構成比は徐々に減少した。2009年度には19.1%まで低下したが、2017年度には20.7%まで回復。依然としてGDPの2割以上を占め、「日本の経済を下支えしている」との見解を示した。
課題は人手不足と品質問題
このように、維持もしくは緩やかに回復しているように見える日本の製造業だが、白書が最も大きな課題として挙げているのが「深刻な人手不足」だ。
経産省が2018年12月に実施した調査では、人材確保の状況について、「大きな課題となっており、ビジネスにも影響が出ている」との回答は、2016年の22.8%から2018年には35.7%へと12.9ポイント増加(図1)。「課題ではあるが、ビジネスに影響が出ている程ではない」「課題が顕在化しつつある」を併せると94.8%の企業が人材確保に何らかの課題を感じているという結果が出た*2。
*2 図2、図3も2018年12月に実施したアンケート調査の結果。
白書がもう1つ、大きな課題として挙げているのが「品質問題」だ。2017年10月以降に発覚した品質データ偽装問題について、「我が国製造業全体の競争力にも影響を及ぼしかねない事態」と重視。アンケート調査結果から、品質トラブルが発生する原因として「従業員教育の不足」や「従来慣行への依存、馴れ合い」、「原因究明・再発防止策の不徹底」などを挙げた。
また、品質トラブルが「ほとんど発生していない」、あるいは「減っている」企業の過半で、「経営層が常に現場の状況を把握している」との結果に触れ(図2)、経営層が強いリーダーシップを示して、品質保証体制の構築に取り組む必要性を説いている。