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 金属にしか見えないのに背面からの光が透ける─。そんな技術を印刷会社の技光堂(本社東京)が開発した。「METALFACE」と呼ぶこの技術は、シルクスクリーン印刷の1種で、樹脂フィルムなどの透明母材に金属調の印刷を施すもの。金属の高級感を演出しつつ表面に文字や数字、絵柄を浮かび上がらせられる新しい技術だ。ヘアラインやスピンといった金属表面の加飾加工も再現できる。

 一見すると本物の金属のように見えるが、インク層が光を透過するのが特徴で、背面から光を当てるとあたかも金属の内側から光が透けているように見える(図1)。新しい加飾技術として、家電製品の表示部や自動車のインスツルメンツパネル、ウエアラブル機器などのユーザーインターフェース(I/F)用途での利用を見込んでいる(図2)。

(a)
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(b)
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図1 金属板の背面から光が透けたように見える「METALFACE」
金属表面に文字や絵柄が浮かび上がっているように見える。特殊な金属調印刷技術によって、背面の光がインク層をきれいに透過するようにしている(a)。(b)は点灯前のもの。(写真:日経ものづくり)
図2 METALFACEの想定利用シーン
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図2 METALFACEの想定利用シーン
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図2 METALFACEの想定利用シーン
自動車のインパネや家電製品の表示部への採用を想定している。(写真:技光堂)

インクの調合で透過具合調整

 金属調の印刷技術自体は珍しくない。METALFACEの最大の特徴は、先述のようにインク層が光をきれいに透過する点にある。特許出願中として技術の詳細は明かさないが、金属調を再現する特殊な原版と専用のメタリックインクを使い、数回に分けて印刷。「金属の柄を解析して、他にはない版を作って印刷している。照射する光の強さに合わせて、インクを調合して透過度合いも調整できる」(技光堂執行役員営業本部長の佐藤英則氏)という。

 母材が樹脂なので光はもちろん電波も透過する。非接触式カードリーダーやウエアラブル端末などの無線通信機能を搭載する機器でも、ノイズやアンテナの遮蔽といった問題を気にせずに適用できる。軽量化という点でも本物の金属よりも有利だ。

 加えてタッチパネルにも対応できる。スマートフォンやタブレット端末の描画ソフトなどと組み合わせれば、金属板の上をペンや指でなぞると、その軌跡が光ったように見える(図3)。

図3 タブレット端末への適用
図3 タブレット端末への適用
なぞった軌跡が光るようにすれば、金属板の表面に文字や絵を描いたように見える。(写真:日経ものづくり)
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