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産業用の国内ロボット・メーカーとして、ファナックと並ぶ雄と言えるのが安川電機だ。ロボット市場がグローバルで拡大を続け、ドイツKUKAやスイスABBなど海外の強豪もひしめく中、安川電機は何を強みとし、どこに向かうのか。創業100年以上の同社で代表取締役社長を務める小笠原浩氏に戦略を聞いた。(聞き手は大石基之=日経BP総研クリーンテックラボ)

小笠原 弘(おがさわら・ひろし)
小笠原 弘(おがさわら・ひろし)
安川電機 代表取締役社長
愛媛県出身。1979年九州工業大情報工卒業後、安川電機製作所(現安川電機)に入社。2006年に取締役、2011年にモーションコントロール事業部長に就任。代表取締役専務執行役員技術開発本部長を経て2016年3月21日より現職。(写真:菅敏一)

本社をはじめ中核機能を創業の地(福岡県黒埼)に集約するなどの動きが目を引いています。創業の理念として大切にしているものを教えてください。

小笠原氏:当社の経営理念には、品質重視、顧客重視、社会貢献の3つがあります。もう1つ、我々にとって重要なキーワードが「技術立社」です。だからこそ経営理念の最初に品質重視がくるんです。つまりは、技術立社や品質重視という方針こそが社会的な信頼につながると考えて事業運営しています。

 従って、全く違う事業領域に投資をするとか、事業規模拡大のためだけにM&A(合併・買収)をするという考えは基本的にありません。我々がM&Aをするのは技術を補完するという目的がある場合です。シェアをとるために同業他社を買って市場だけを手に入れて、残りを捨てるみたいなことはやりません。

ここは足りない、これから必要かもしれないと思う技術領域は何でしょう。

小笠原氏:当社がメカトロニクスというキーワードでずっと事業展開してきた中で、今絶対この技術が足りないからどうにかしなければいけないというものはないですね。あったら負けますから。

 当社が100年超の歴史の中で行ってきたのは、シンプルにモーターとその制御に集約されます。私たちの工場自動化のベースの技術となるのがモーターです。工場の自動化という流れがなくなることはありません。ただし、その自動化のためにモーターを必ず使うのかと言われると100年後は分かりません。

その根幹である「モーターとその制御」について今後の市場環境をどう見ていますか。

小笠原氏:使われるモーターの数は大きく拡大すると思います。例えば中国の十数億人のうち、豊かな生活をしている人が1億人ほどだとして、それ以外の人々が豊かな生活を享受しようとすれば、今後10倍の需要が見込めます。いろんなものを手に入れていこうとしてモーターの需要は広がります。

モーター需要が広がる中、中国などの日本以外から競合が浮上してくる可能性は。

小笠原氏:いくらでもあります。しかし、一口にモーターと言っても、いろんな種類があります。モーターの市場が広がる中で、使われるモーターの種類も増えていきます。ですから競合が出てきても、市場が広がってさえいけば住み分けられると見ています。

 当社は産業用途(B to B)のサーボ・モーターをメインにしています。一言で言えば、「止めるモーター」です。モーターは単に動かせばいいというものではなくて、ロボットを動かすなどいろいろなことをすると、止めるのも大切になるのです。

 サーボを使ったロボットは、何かをつかんで動かすといった動きをします。どこかにぶつかってはいけないので、確実に止める必要がある。つまり、「止める」に神髄があるモーターなんです。止める技術については、少々のことでは他社に負けません。止めるにはいろいろな要素技術が必要。センシングの技術も不可欠ですし、モーターの慣性を制御する技術も重要です。