新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の拡大は、製造業の開発・設計業務に大きな影響を及ぼした。そして、ウィズコロナ/アフターコロナにおける開発・設計業務はどうあるべきなのか。CADなどの設計ツールを手掛ける米オートデスク(Autodesk)日本法人の技術営業本部長である加藤久喜氏、米PTCの日本法人であるPTCジャパンのソリューション戦略企画室ディレクター・フェローの後藤 智氏、同社CADビジネスデベロップメント ディレクターの芸林 盾氏に聞いた。(聞き手は高野 敦=日経クロステック)
オートデスク・加藤久喜氏:
クラウドに数十倍の利用
新型コロナが製造業に与える影響をどう見ているか。
加藤氏:自動車業界をはじめ、製造業の技術系職場でも在宅勤務が始まっている。国内では、VPN(Virtual Private Network)を介して会社のPCをリモートデスクトップ操作する事例が多いようだ。一方、米国など海外では従業員の自宅に環境を構築し、モデリングなど設計業務を行っていると聞く。海外の自動車業界はセキュリティー面からデータの持ち出しなどに厳しいので、我々としても驚きだ。
ユーザーからはどのような相談や要望があったか。
加藤氏:在宅勤務でのツールの使い方が契約に違反しないかを確認したいという相談が多い。現状では、CADやPDM(製品データ管理)などの開発・設計業務に関わるツールは、社内のワークステーションやサーバーにインストールしている企業がほとんどだ。我々はクラウドへの構築を前提とした3D-CAD「Fusion 360」やPDM「Fusion Team」を提供している他、クラウドベースの解析機能やジェネレーティブデザイン機能なども併せて提案している。
Fusion 360などについて期間を区切って実施した無償提供プログラムには、多くの申し込みがあった*。新型コロナ以前と比較して数倍、いや数十倍だ。クラウドベースのツールは、場所を気にせずに使えるのが特徴。クラウドに移行していたので新型コロナの第1波を乗り切れたというユーザー企業が少なからずあった。
開発・設計業務に関わるツールやデータのクラウドへの移行には、日本のユーザーはあまり積極的ではない印象がある。
加藤氏:日本でもデータのストレージやバックアップはクラウドで、という企業が増えている。「AWS」(米アマゾン・ウェブ・サービス)や「Azure」(米マイクロソフト)といったクラウドサービスの普及が大きい。
我々の提案は、全てをクラウドに移行するのではなく、移行できる業務やデータを明らかにしようというものだ。PDMやPLM(Product Lifecycle Management)など社外との連携が必要な部分は、外(クラウド)に出した方がむしろ良いという考え方もある。