全2172文字
PR

 「次世代を担うタイヤ実現への第一歩だ」─。こう力を込めて語るのは、住友ゴム工業材料開発本部材料企画部長の上坂憲市氏。植物由来のセルロースナノファイバー(CNF)*1をタイヤの構成材料として配合し、「世界で初めて」(同社)量産にこぎ着けた。

*1 セルロースナノファイバー
植物の細胞壁内に存在し、直径が数nm、長さ数百nmほどで繊維状の物質。引っ張り強さは3GPaと鉄の5倍あるが、密度は1.5g/cm3と鉄の1/5にすぎない。樹脂やゴムの補強材として使えば、完成品の強度を高めたり、軽くしたりできると期待されている。

 2019年12月に発売した低燃費タイヤの旗艦モデル「エナセーブ NEXT III」で、タイヤの質量比数%未満のCNFをサイドウオール(側壁)に配合した(図1)。繊維配向の制御により、強さと乗り心地を両立できたという。

図1 住友ゴム工業が世界で初めて量産したCNF配合タイヤ
図1 住友ゴム工業が世界で初めて量産したCNF配合タイヤ
2019年12月に発売した低燃費タイヤの旗艦モデル「エナセーブ NEXT III」のサイドウオール(側壁)に配合した(左)。従来はゴム中のCNFの分散に課題があったが、製造技術を高めてCNFの塊を排除し、均一に混ぜ込んで量産にこぎ着けた(右)。(住友ゴムの提供画像を基に日経クロステックが作成)
[画像のクリックで拡大表示]

 今回、CNF配合タイヤが誕生したのは、製造技術の改良によるところが大きい。タイヤ製造の住友ゴムのみならず、CNFの供給元である日本製紙と、中間材料を製造する三菱ケミカルの協力で実現した。

 日本製紙がnmサイズまでほぐしたCNFを供給し、三菱ケミカルがCNFとゴムを混ぜた中間材料である「ウェット・マスター・バッチ」(WMB)を製造。住友ゴムが最終製品用のゴム材料と混ぜて加工し、タイヤとして仕上げている。