米国のベンチャー企業が発表したカーボンロードバイクが注目を集めている。米AREVO(アレボ)が発表した「Superstrata」(スーパーストラータ)だ(図1)。自社開発の3Dプリンターを使ったアディティブ製造(AM:Additive Manufacturing)技術によって、継ぎ目のない一体構造(ユニボディー)のフレームを炭素繊維強化プラスチック(CFRP)で成形。購入者の体形に合わせて寸法構成(ジオメトリ)をカスタマイズできる。
CFRP製カスタムフレームのバイクを約30万円から入手できるとあって、2020年7月中旬に予約を開始したクラウドファンディングサイト「Indiegogo」では、目標金額の40倍を超える4億5000万円以上を集めた。
e-bikeも43万円から
Superstrataは「Ion」(イオン)と「Terra」(テラ)の2モデルがある。前者は電動アシスト機能付きのいわゆるe-bikeで、Terraよりもやや太いダウンチューブ*1の中にバッテリーを内蔵する。後者は11段の変速機を搭載する通常のロードバイクである(図2)。
フレームを構成する部材の一部でハンドルからクランク軸に伸びる部分を指す。
e-bikeのIonは、出力250Wのモーターを搭載し、2時間の充電で55マイル(約90km)の走行が可能という。フレーム単体の質量はそれぞれ1.6kgと1.3kg。完成車体の質量は11kgと7.5kg程度である。価格は、3999米ドル(約43万円)と2799米ドル(約30万円)。
どちらもシートチューブ*2のない独特の形状のフレームが特徴だ。AM技術によって、このフレームを継ぎ目なしで一体造形するとともに、マスカスタマイゼーションを実現した。購入後に専用サイトから身長や体重、腕や脚の長さ、好みのライディングポジションなどの情報を入力すると、その体形に合ったジオメトリを設計してオリジナルのフレームを造形する。フレームのサイズや色、ホイールなどカスタマイズの種類は50万通り以上になるという(図3)。
フレームを構成する部材の一部でシートからクランク軸に伸びる部分を指す。
CFRPの樹脂には、エンジニアリングプラスチックの一種であるポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を採用している。フレーム形状による振動吸収性に加えて、シートポストによる振動吸収性も高いという*3。
通常、CFRP製のフレームはシートチューブやトップチューブといった部材を接着・締結して構成するが、Superstrataのフレームは接合部が無いため軽量かつ高い耐衝撃性を持つという。CFRP製フレームのロードバイクの価格は一般に、安価なものでも50万円程度、高価なものは200万円以上するが、AM技術によってカスタムメードで30万円台からという価格を実現した。