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自動車業界の変化が急だ。電動化が進み、付加価値の源泉がハードウエアからソフトウエアに移っている。新型コロナウイルス感染症(新型コロナ)の打撃も大きい。自動車開発は今後どう変わるのか。自動車技術会(自技会)新会長の寺師茂樹氏と、日本自動車部品工業会(部工会)新会長の尾堂真一氏に聞いた。(聞き手は清水直茂=日経クロステック)

競争から協調への契機

寺師茂樹氏
寺師茂樹氏
自動車技術会会長(トヨタ自動車取締役・執行役員)(出所:トヨタ自動車)
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 自動車業界も「ソフトが主役」の時代になる。これまで主役だったハード技術者には厳しい時代になりそうだ。ただし、ハード技術者の役割は一層重要になる。今後の自動車は、生産開始後も進化するソフトの進化を、あらかじめ見越したハード設計が必要になるからだ。

 ソフト技術者には、従来の価値観にはないアイデアの実現が求められる。目指す行く先を見つけるのが大事だ。言われた通りにソフトを組むだけではだめ。クルマだけを見ていては足りない。異なる業界で働く人などと話す場が必要だ。ソフト技術者が、無限に広がる新しい世界について考えたり、今後の技術進化の方向を共有したりする場を自技会につくりたい。

コネクテッド技術でクルマ開発が変わる

 発売後のデータ収集を可能にしたコネクテッド技術によって、自動車開発も変わる。従来のクルマの企画は、現行モデルを基準にお客さんの評価を見て決めてきた。今後は世界中のクルマからフィードバックされたデータに基づいて判断し、企画や評価を進められる。

 私が自動車技術者になったばかりの約40年前、過去の失敗を踏まえた多くの基準があった。過去の不具合を「モグラたたき」で積み上げてきた基準のおかげで、クルマの信頼性や性能が高まった。ところが、「軽量化のために何を削るか」という課題を前にした時、一律の基準があると部品の強度を弱める判断がなかなかできない。もしも地域ごとにお客さんの使い方が分かれば、その地域ごとの使われ方に合わせて適正な強度を判断しやすくなる。

 昔は互いに手の内を明かさず、どの企業が早く開発するのかという「競争」が優先されていたかもしれない。今は、新しい技術を普及させることの優先順位が高くなってきた。環境技術や安全技術などで、良いものはみんなで使って広めようという「協調」の姿勢が出てきた。

 技術の協調にとどまらない。世界各国の法規制やインフラまで変えるとなると、海外の技術者以外の人たちとも協調しないといけない。関係者がどんどん増える。多くの会社から技術者が集まる自技会の役割は一層大きくなる。(談)