トヨタ自動車が、ばら積みピッキングロボットの導入を大きく進めようとしている。これまで課題だった投資対効果にめどが付いた。先行的に堤工場(愛知県豊田市)の量産ラインに適用しており、将来全社に展開するための「理想形」を2021年上期中に確立する。
シャシーに組み付ける部品を整列
ばら積みピッキングロボットは、箱の中に乱雑に積まれたワークを把持・運搬するロボット。トヨタ自動車は、川崎重工業のばら積みピッキングロボットを採用した(図)。堤工場では、自動車のシャシー(車台)に溶接する小物部品の整列に使っている。箱にばら積みの状態で納品された部品の位置や姿勢を認識して1つずつ取り上げ、台上まで運んで並べる。それを別のロボットがシャシーに運ぶ*1。
一般的な産業用ロボットと異なり、ばら積みピッキングロボットには部品(ワーク)や周辺環境を認識する“目"と、ロボットハンド/アームの最適な軌道を計算する“頭脳"が必要であり、実現の難度は高い。近年、多くのロボットメーカーや人工知能(AI)スタートアップが開発に力を注いでいるが、自動車のような大量生産用途では位置決め精度やタクトタイムといった要求が厳しく、広く普及するに至っていなかった。
トヨタは、川崎重工のばら積みピッキングロボットを採用した上で既存の工程をロボットに合わせて変更すれば、投資に見合ったコスト削減効果を得られると判断。本格的な活用に踏み切った。