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 プラスチックの切削加工を手掛けるJpキュービック(愛知県豊川市)が2020年10月から、ちょっと変わったサービスを始めた。「加工レシピの販売」だ(図1)。

図1 Jpキュービック代表取締役社長の伊藤雅彦氏
図1 Jpキュービック代表取締役社長の伊藤雅彦氏
手に持っているのは、アクリル製の「くもの巣」のサンプル。同社では、難度が高いプラスチックの高精度加工製品を造るための「レシピ」を販売するサービスを始めた。(出所:日経ものづくり)
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 同社は、複雑な形状や細穴、鏡面加工といった難度の高いプラスチック加工を超高精度で仕上げる独自の切削技術で知られる。写真のアクリル製くもの巣はその一例(図2)。くもの巣の「糸」の径は約0.15mmで、入り組んだ曲線形状を全て切削加工で仕上げている*1

図2 アクリル製くもの巣
図2 アクリル製くもの巣
くもの巣の「糸」の径は外円と内円、経糸が全て0.158mm。ただしレシピを提供するのは外円が0.5mm、内円が0.3 mm、経糸が0.4mmのタイプ。(出所:Jpキュービック)
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*1 この他、壁厚0.014mmという薄肉加工のアクリル製ハニカム板や、縦3×横2×高さ1.8mmのナイロン素材を3面加工した上で「バリを出さない」という条件を付けられたケースなど、難度の高いプラスチック加工を数々手掛けてきた実績があるという。

 「我々は他社が『できない』と断った加工を引き受ける駆け込み寺」と同社代表取締役社長の伊藤雅彦氏は胸を張る。例えばこれまでに「0.1mmのナイロン系特殊フィルムを削って部分的に0.05mm厚にしたい」との依頼を受けたケースがある。公差は5μm(0.05mm~0.055mm)という極めて厳しい条件だ。そもそも厚さ0.05mmのシートなので、加工以前にクランプ(ワークの固定)が困難。それでも同社はこの要望に応えたという。

 今回、同社が販売を始めるレシピは、こうした「他社が『できない』と断った」加工を実施する手法だ。いわば門外不出の秘中の秘を売ってしまうという大胆な取り組みである。