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 NTNは2020年11月、新しく開発した2種類の軸受製品を発表した。1つは、「サーボモーター用低発塵(じん)軸受」。従来品よりも発じんと回転トルクを低減した。もう1つは、工作機械の主軸に組み込む「センサ内蔵軸受ユニット」の改良品で、軸受の稼働状態をセンサーで監視できる。いずれも工作機械関連の展示会「JIMTOF2020 Online」(2020年11月16~27日)に出展した製品である。

モーター小型化に発じん減が必須

 サーボモーター用低発塵軸受は、密封型の深溝玉軸受(図1)。同型の軸受はサーボモーター向けとして、広く使われている。今回、封入するグリースの成分と配合を工夫し、発じんを抑えた。接触型シールの形状を見直し、内輪との摺動(しゅうどう)部の接触力を均一にして密閉性を高めるとともに、低トルク化を図った。従来品と比べて、軸受からの発じん量は約90%減り、回転トルクは約50%低減した(図2)。

図1 サーボモーター用低発塵軸受
図1 サーボモーター用低発塵軸受
接触型シールの形状とグリースの成分を見直した。(出所:NTN)
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図2 発じん量と回転トルクの比較
図2 発じん量と回転トルクの比較
従来品と開発品で性能を比較した結果。軸受からの発じん量は従来比約90%、回転トルクは同約50%低減したとする。両グラフとも、従来品の性能を100としている。(出所:NTN)
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 産業用ロボットで関節部の駆動に使われるサーボモーターは、関節部の動作速度を高めるためにも小型化と高出力化が常に求められてきた。サーボモーターのきょう体内に回転検出器やブレーキといった制御機器を内蔵している場合、小型化しようとすれば、どうしても制御機器と軸受が近づくことになる。すると、飛沫となって飛散する軸受の油分が制御機器に付着して、回転数の検出精度やブレーキの制動性が低下する恐れがある。

 軸受の油分が制御機器に付着するのを防ぐため、従来のサーボモーターではきょう体内部に軸受側と制御機器側を仕切る密封装置(シール)が用いられてきた。しかし、この方法では制御機器と軸受の間にある程度のスペースが必要なため、サーボモーター小型化のネックとなっていた。

 低発じんの軸受であれば密封装置が不要になるため、サーボモーターの小型化につながる。さらに、軸受の回転トルクが減った分だけ出力を高められるメリットもあるという。